百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 169p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119204
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

「こうして床を並べて眠るのも今夜ぎりだ」―。娘の結婚式を控えた父親の真情が胸にしみる尾崎一雄の『華燭の日』。戦後の苦しい時代、酒宴の席で怪しげな人生談義が始まった。語り合ううちに哀感の底から湧いてきた新しい希望(高見順『草のいのちを』)。気苦労ばかりの勤め人として幾星霜、ついに定年の日を迎えた「私」。解き放たれた「自由な時間」を前に会社への訣別と感慨を綴ったラムの『年金生活者』。名もなき日々が美しい、愛とユーモアの一冊。

著者等紹介

尾崎一雄[オザキカズオ]
1899‐1983。三重県生まれ。志賀直哉に師事し、1937年に『暢気眼鏡』で芥川賞受賞。戦後を代表する私小説作家のひとりで、78年に文化勲章受章

高見順[タカミジュン]
1907‐1965。福井県生まれ。プロレタリア文学から出発し、後に転向。1935年の『故旧忘れ得べき』で、小説家としての地位を確立した。詩人としても優れた作品を残している

ラム[ラム][Lamb,Charles]
1775‐1834。イギリスの随筆家。東インド会社に33年間勤務し、姉・メアリーを介護しながら文筆活動を行う。「エリア」の筆名で発表した随筆は、イギリス随筆文学の最高峰といわれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

107
この百年文庫は良いシリーズで、お勧めです。定番の名作短編以外にも光を当てているところが気に入っています。ここでは尾崎一雄の「華燭の日」と高見順の「草のいのちを」が良かったです。「華燭の日」は結婚式前夜の娘と父の会話が泣かせます。「草のいのちを」は主人公が詩を歌いだすシーンが印象的。心の中から湧き上って来る純粋な想いを描いて、詩が出来上がる瞬間はまさにこのようなものだと思います。優れた詩人でもあった高見順らしさがよく出た小説でした。2014/04/10

モモ

46
尾崎一雄『華燭の日』『痩せた雄雞』一人娘が嫁ぐ寂しさ。私小説だけあってリアルに作者の思いが伝わる。自分と共に生きる伴侶の性質が自分に合っていて、とても良いことが伝わる。幸せな日々の話に思える。高見順『草のいのちを』特攻隊から生きて帰ってきた友人の弟への詩がいい。『われは草なり 伸びんとす~ああ生きる日の美しさ ああ生きる日の楽しさよ~草のいのちを 生きんとす』ラム『年金生活者』『古陶器』念願の退職を果たしたものの時間を持て余す私。お金がない時の方が人生が楽しかったと振り返る夫婦。日常があふれた一冊でした。2022/09/28

ぐうぐう

29
「日」をテーマにした『百年文庫』38巻。冒頭に収録された尾崎一雄の「華燭の日」は、娘の結婚式に至る父親の心情を綴った一編。父親の強がりと本音が絡み合う描写は、大いに共感できるものの、どこか凡庸さも覚えさせてしまう。ラムの「年金生活者」は、自由な時間を夢見てきた労働者が定年を機に手に入れた自由の日々が、自由であるがゆえに不自由なのだと気付く皮肉が面白いが、教訓的な体裁に鼻白む部分もある。続く「古陶器」も人生の皮肉を描いている点で同様だ。(つづく)2018/07/19

神太郎

26
何でもない一日がとても、大切だと思わせる一冊。尾崎一雄、はじめて読んだがユーモア溢れる作家であると思った。高見順、終戦後の生活についてかかれてる。どんなことがあっても自暴自棄にならず、生きることをやめてはならないと思わせる。ラムは生きること、働くこと、人生についてユーモアを交えて描く。何気ない日常はつまらないけど、だからこそ素晴らしく、美しいのではと思わせる。2017/06/01

20
尾崎一雄「華燭の日」「痩せた雄鶏」ラム「年金生活者」「古陶器」高見順「草のいのちを」の5編。尾崎一雄は地元の作家。無頼で鳴らした作家がうら若い嫁を娶り、普通の人生を歩むことにへこんだり、かわゆかった嫁が古女房になってくことにブーブー文句垂れたり、娘を嫁に出すのがさみしくて婚礼を日延べしたり、病弱な自分を心配してくれる幼子に「こんな俺でも生きなきゃなんねえな」ってなったり。師匠の志賀直哉もちらっと登場する私小説群。どうってことない話なんだろうけど私は好き。太宰も生きてればこうなれたんだろうになあ。2020/07/18

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