内容説明
アジア世界との関係で成立した古典文学と、西洋世界の影響で形成された近現代文学。それは同質性よりも異質性の多い別種の文学である。両者の根底には、“神と人間の交流の世界”と“神と人間を峻別する世界”の相違がある。この異質な二種からなる日本文学の全体像を解明できなかったために、国文学は凋落した。国文学の成立史を丹念に辿り、再生のための道筋を示す。
目次
国文学の誕生
古典文学の特色
日本文学の本質―超越的な存在との交流
著作権と原稿料
近代における古典文芸批判
近代日本文学の試み
近代日本語の成立
国文学史の成立
文献実証主義の進展
戦争と国文学
国文学―さまざまな意匠
国文学の再生
著者等紹介
諏訪春雄[スワハルオ]
学習院大学名誉教授。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kenitirokikuti
8
図書館にて。とても良かった。諏訪春雄は1934年新潟生まれ。学歴は新潟大の国文科・東大の大学院で近松を論じる。なお、中部大学連合の雄弁大会に優勝の弁論部であり、国文科に留まったのは恩師の説得のためだそうな。学位を取るまでは国学・ドイツ文献学に忠実な研究、のち浮世絵も資料に扱い、昭和末期からは学際的な民俗研究に広げる(折口は沖縄までだったが、それを東アジアに拡張)▲西欧文学(日本近現代文学も属す)の感動論は個人の営みであるカタルシス(魂の浄化)の影響下にあるが、東洋伝統文化では神人交流による生命の再生重視…2021/11/09
山がち
0
正直、印象批評的なところがぬぐえない気がする。筆者の文学観が本当に妥当かどうかは相当疑わしい。神と人間の交流の世界なんて文学観はそのような言説を必要とする人間の慰みではないかと思ってしまうことがないでもない。偉大な研究者の名前を出すあたりにはある種の権威主義を感じないではないし、その一方で研究の精緻さを疑う。文献実証主義の流れを示しながら、本書自体が本当に文献に則っているかが極めて疑わしい。研究書というよりは、新書的な読み物として読むのがせいぜいと言ったところだろうか。どうにも引っかかるところが多すぎる。2014/03/13
sugarC
0
どこまで信用し、摂取すればよいか慎重にならざるを得ない点はあるものの、今後の国文学研究がどうなっていくべきかということに関しては、同意というか、耳の痛い話であった。2014/04/29