出版社内容情報
遊行して広めた踊念仏、阿弥号をもつ芸能者たち、陣僧など中世の歴史文化の巨大な意義と謎を持つ一遍と教団の真の姿を明解に描く
内容説明
遍歴・遊行して賦られた念仏札、広く流行した踊念仏、教団の法名でもある阿弥号をもつたくさんの芸能者たち、敵味方なく戦場を往来し、情報の伝達者ともなる陣僧としての活躍…、日本中世の巨大な存在にしてなお多くの謎を抱える一遍とその教団の全体像を、これまでの研究を総合して明解に描き出す。
目次
第1部 遊行・一遍上人と時衆―いかなる人々なのか(『大菩薩峠』の「遊行上人」;戦前期における「一遍」と「時宗」―不遇の時代;戦後の「一遍」と「時宗」―再評価の時代;阿弥衆の謎;「世阿弥」と「お国」;網野史学と「時衆」)
第2部 『一遍聖絵』の世界―遊行・一遍上人の生涯(『一遍聖絵』;出生から再出家まで;旅立ちから熊野まで;遊行の旅へ;時衆の誕生;京都に入る;旅のなかで;入寂の地へ)
著者等紹介
桜井哲夫[サクライテツオ]
1949年足利市生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。現在、東京経済大学コミュニケーション学部教授。専攻は近・現代社会史、社会思想史、現代社会論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
29
この著者でなければ、の一冊。◇時宗。鎌倉新仏教の一つで「踊念仏」って習ったきり、その後しっかり知ることはないまま。でも社会史や芸能史などで時々登場してくるので気になる存在だった。ちゃんと像を結ばせてくれる。◇この人確かフーコーの本読んだな、と読み始めると、ちょこちょこと「宗門」って言葉が。引っ掛かってたら、気比神宮のお祭りに「住職として檀家と共に参加」とありびっくり。なるほど、だからこその当事者性と客観性か。◇心は迷って当たり前、所詮人は一人、あっけらかんと身も蓋もない現実を前提にする一遍の歌、いいなあ。2014/12/30
Akihiro Nishio
11
読みにくい本であった。新書なのだから素直に一遍の生涯と思想、当時の歴史背景を書いてもらえればいいのに、学会の一遍に関する学術研究の紹介(相当マニアック)でページ半分を費やし、一遍聖絵を用いながらようやく生涯について語るかと思えば、描かれている遊行している女性が誰かということについての諸説を長々と語ったりである。最後は徳川家と時宗の繋がりについてマニアックな議論で締める。かなり一遍や時宗について詳しい人向けの本だろう。ある時期まで、時宗と浄土真宗の区別はそんなにされていなかったんだろうという説には納得。2016/01/31
田中峰和
8
鎌倉仏教の開祖として法然、親鸞、日蓮などに並ぶ一遍だが、現代における時宗の普及度は極めて低く寺数も少ない。実父の存在すら不明瞭な秀吉だが、その養父は竹阿弥という時宗の僧らしい。母が蓮華寺の僧と密通してできた秀吉。ハンセン病患者の世話をする被差別者集団の乞食村で育ったともされる。一方、下賤つながりで、芸能と時宗とのかかわりも説明される。能で有名な観阿弥・世阿弥。阿弥の称号は時宗に多かったし、出雲阿国と時宗のかかわりも出てくる。踊念仏で大衆の信仰心を煽った時宗だけに、芸能や舞踊と繋がっても何の違和感もない。2020/04/05
tyfk
4
「柳(宗悦)が、最初に一遍に心ひかれたのは、『一遍聖絵』第一巻第二段に描き出された一遍一行の姿に感動したからである。」p.312023/08/23
keint
2
前半は一遍・時宗研究史のまとめ、後半は「一遍聖絵」の解説という構造になっている。 どちらとも大いに参考になり、時宗の教義や一遍の思想をもっと知りたいと思わせる内容だった。2019/09/10