出版社内容情報
「壮烈な戦死」を遂げたといわれる山本五十六、硫黄島での最期をめぐって伝説が残される「バロン西」ら、8人の死の深遠に迫り、昭和という時代の実相を描く。
内容説明
昭和という時代は、戦争を前後して、あらゆる分野が激変し、ひとの価値観も大きく変わった。そんな時代に生き、死んでいったひとたちの“末期の眼”には何が映っていたのだろうか。昭和史から八人をピックアップし、それぞれの死の深遠に迫る。
目次
第1話 近衛直麿―身分に反逆した愛しきプリンス
第2話 山本五十六―和平の機会を作りだせずに自決
第3話 西竹一―栄光を伝える戦死報告
第4話 大西瀧治郎―徹底抗戦の真意はどこに
第5話 中河与一―左翼の生贄にされた流行作家
第6話 村上昭夫―岩手山が生んだもうひとりの天才詩人
第7話 秋月清―名もなく病室に果てた空の勇士の墓碑銘
第8話 鈴村善一―三途の川を十六回往復した特攻隊員の経営哲学
著者等紹介
大野芳[オオノカオル]
1941年愛知県生まれ。ノンフィクション作家。『北針』で第1回潮賞ノンフィクション部門特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamatoshiuruhashi
35
「昭和」を代表する事象に生きた人々の「死」への道程が書かれた本。書名は寧ろ「昭和史の中での死にざま」と言った方が良いだろう。本書に取り上げられた近衛兄弟の生き方、死にざまに何ら共感することもない。山本五十六は機上戦死ではなく墜落後の自決だと言うが、かと言って著者が言うように「昭和史が変わる」と言う捉え方は全く出来ない。しかし中河与一を貶めた平野謙や中島健蔵の卑劣さはもっと文学史上に明記されるべきだ。が中河の知名度がそれを求めるほどでもない。特攻に関する人々の記録こそが本書の最も価値あるところではないか。2019/04/02
キムチ27
31
新書、車中の友にと軽く読み始めたのだが・・何とも言えぬ清々しい手ごたえがあった。昭和を体現する人物が綴られる。知っているのは半分、山本五十六、近衛兄弟、西竹一、中河与一。知識は簡単な評釈程度。昭和史を形造るのは世界大戦、そして帝国主義から民主主義への概念転換。そこで青春の多感な時間を過ごした男達。軍人が5人、そのうち特攻隊が3人。手記を読んだ程度だった私に、文中の会話の抜粋は思わず襟を正さしめる鮮烈なものだった。幾人かはついこの間亡くなった方々。歴史が風化しないよう「知る」人が増える事も重要だ。2014/12/17
兵衛介
4
戦争中、腕利きの零戦パイロットとして何度も特攻直掩機の任務を遂行し死線をかいくぐってきた人が、戦後、その過酷な体験から精神に異常を来し、何十年も精神病院暮らしをしている話が胸を突いた。2010/04/04
Yana Hashiguchi
1
近藤直麿や山本五十六といった文化人から軍人に至るまでの様々な人間がどう生きどう死んだかについて書かれたノンフィクション。 特に大西瀧治郎の章は、何故特攻をしなければならなかったか大西の思考過程を追う話は非常に興味深い。昭和という日本史上屈折しながらも希望あふれた奇妙な時代を生きた人々が「記録の中に」生きていると言える一冊。2015/11/11
rinrinkimkim
1
大西瀧治郎という人のお話には驚きました。史実が忠実とは限らないわけでその時代で美化されたり逆もまたありき。特攻隊の本来の目的がこの本に書かれていたとおりとしたならば「人柱(ひとばしら)」とはまさにこの戦法だと思う。靖国神社の遊就館に納められた花嫁人形を思い出してしまった。死にざまというより一人の男の生き様をザックリ書いた感も無きにしも非ず それにしても・・・・早くマオ後半を読まねば・・・(焦)2014/10/11