出版社内容情報
非科学的と考えられがちな江戸の国学者の言霊研究だが、現代言語学に通底する発見もあった。ことばの渉猟者の足跡をたどり詩的言語としての日本語表現に迫る。
内容説明
コトダマは、呪術的な思考や国粋的な主張と結びつくと、言霊信仰や言霊思想などと呼ばれることもあって、非科学的な発想だとされがちである。しかし情報が少なかった江戸時代の国学者の研究・分析を読みなおすと、ことばに沈潜した博学たちだからこそ、たどり着けた鋭い言説が垣間見える。そこでは学問的な蓄積がはじまっており、現代の言語学に通底する発見もあった。ことばの渉猟者たちの足跡をたどり、ことばの深奥と、詩的言語としての日本語表現に迫る一冊。
目次
第1章 『万葉集』の言霊(奈良時代には使われていた語;「言」と「事」 ほか)
第2章 江戸時代の言霊(古文辞派の解釈方法;国学者の古文辞学 ほか)
第3章 富士谷御杖の言霊倒語説(形而上学的な解釈学;ひとえ心とひたぶる心 ほか)
第4章 和歌と言霊(詞の匂い・詞の裏;ことばの「我と彼」 ほか)
著者等紹介
今野真二[コンノシンジ]
1958年神奈川県生まれ。清泉女子大学教授。『仮名表記論攷』(清文堂出版)で第30回金田一京助博士記念賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gorgeanalogue
18
電子版。「言霊」思想がどちらかというと近世的なものであることを明らかにした後、江戸の国学者の主張を紹介する。富士谷御杖の「倒語言霊」説はなかなかに興味深く、本書でも触れられるソシュールなど記号論・修辞論的にも展開できるだろう。連合関係あるいは喩的な「詞の影」は、反省を可能にする「文字」として書かれることで生まれる、といってみていいだろうか。そういう興味からは、「かきことば」の存在論的な?意味について、また言霊あるいは音義説の根拠について、もう少し突っ込んでほしかった。終盤は国文学者のボヤキみたいで白ける。2022/10/22
春風
12
万葉集における「言霊」の使用の歴史を見、江戸時代の国学者たちの論じた言霊論を概観する。本書では後者に主眼を置いており、特に富士谷御杖にフォーカスしている。言霊一般というよりは国学的解釈における言霊の紹介といった一冊。言葉の世界に沈潜した江戸時代の国学者たちが言霊の理論化を試みた際に説かれた、音義論や御杖の倒語論が紹介されており興味深い。現代文法と共振するような内容も少なくない。国学における言霊の理論化は、完全無欠の説明的文書には無く、文学作品にはあるモノの理論化であったように思う。2021/08/15
さえもん
0
一つ一つの文字には、まさに「語感」と言うように、なんらかの感じが全人類に共通してあるものだと思う。音義説まではいかないにしても。 筆者の「影の詞」の説明には疑問を持った箇所がある。「影の詞」は、表に出た詞の裏にある、いわば無意識的に連想される様々な詞(例えば、「月」が表なら「秋」とか「秋の夜」とか「春霞」とか。)のことなのに、顕在化した言葉、潜在化した言葉の説明辺りから、それまでとは全く違う説明になってしまった。影の詞は、選ばれた言葉の裏にある選ばれなかった言葉のことではない。2021/10/15
まーくん
0
「江戸の国学者が発見したことばの本質とは」という帯に惹かれて購入したが専門性が高く難解であった。なお、巻末の「話言葉と書き言葉」や日本語で多用されるオノマトペの部分は興味深かった。2020/12/31