著者等紹介
ラマルシュ=ヴァデル,ベルナール[ラマルシュヴァデル,ベルナール] [Lamarche‐Vadel,Bernard]
1949年、フランスに生まれる。詩人であり、早い時期から美術評論を手がける。ジャン・デゴテックスなど、数々の現代美術の展覧会を組織し、ヨーゼフ・ボイスの最初のフランスへの本格的紹介者となる。数多くの美術評論を刊行。写真評論も多い。現代美術のコレクターでもあり、ロベール・ブレッソンの映画『ラルジャン』には俳優として出演している。40歳を過ぎてから、長篇小説三部作『獣医』、『すべては壊れる』、『彼の生、彼の著作』をはじめとして、次々に小説を発表。2000年、銃による自死
鈴木創士[スズキソウシ]
フランス文学、作家、ミュージシャン
松本潤一郎[マツモトジュンイチロウ]
1974年生まれ。フランス文学・哲学専攻。立教大学ランゲージセンター教員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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渡邊利道
1
美術評論家でブレッソンの映画に出演したことがあり、四十を過ぎてから小説にも手を染め、本書を含む三部作を刊行して自殺したという人物のレシ(だろう、たぶん)。バロックな文体と言うことだが、翻訳ではやや晦渋でレトリック過多に感じられ、いまひとつ面白みに欠けるが、犬の描写は素晴らしかった。テレビの狂騒を戯画的に描き出すあたりはむしろ通俗的で、死体のモチーフに内臓幻想の硬質さが感じられないのだが、これもやはり翻訳の問題だろうか。2017/05/17
保山ひャン
1
大量の動物の虐殺死体に囲まれて、主人公は犬と暮らし、神学者ボシュエの『追悼演説集』を読み、ドンチャン騒ぎのテレビを見ている。そこに、なんだかうっとうしいボヌール夫妻が監視するようにつきまとう。後半、「段落の始めから進みながらも、読まれた文章の意味の輝きにもはや達することもなく」とか「言葉は私から逃げ去り」とか「私の指は私の目がとっ捕まっているページの上に広がる蔓をほどこうと躍起になっている」なんて文章が出てくる。まさにこの本の読書体験そのものの言葉だった。すべての言葉を読み飛ばせない濃密な困惑。すごい!2016/03/09