出版社内容情報
文化進化というアプローチは当然に生物進化のアナロジーである。文化の継承とその過程での変異の蓄積という進化的な視点が役に立つのだ。そして考古学という営みもまた、文化進化の対象である。日本考古学が有する膨大なデータを様々な角度から考察し、数理的手法を用いてデータに基づく文化の歴史科学を構築するための基盤を提供する。
内容説明
生物進化の考え方は、祖先から継承されてきた文化進化にもつかえる。歴史科学構築の基盤を提供する研究成果。
目次
第1章 現代的な文化進化の理論
第2章 遠賀川式土器の楕円フーリエ解析
第3章 幾何学的形態測定学による前方後円墳の墳丘形態の定量的解析
第4章 戦争と人類進化―受傷人骨の視点から
第5章 考古学は進化学から何を学んだか
補遺 幾何学的形態測定学とRを使った解析例
著者等紹介
中尾央[ナカオヒサシ]
1982年生。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学、京都大学)。現在は山口大学国際総合科学部助教。専門は科学哲学・科学技術社会論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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月をみるもの
13
地球の歴史については、化石の分類/消長から相対年代を出し、放射性同位体年代測定ができる資料について絶対年代を出してアンカーをうってきた。一方考古学では、たとえば土器の形式を化石の形状のように解析して相対年代を導出してきたわけだが、最近になった炭素14同位体や年輪の解析から絶対年代を出せるようになってきた。当然ながら、両者の共通性に基づき、じつは文化も生物のように(ランダム性や淘汰圧によって)進化するのではないか? という発想が出てくる。→ 続く2019/04/14
mim42
3
興味深い研究報告。一章の二つのモデリングが面白かった。個々の手法は洗練化の余地がありそうなので今後に期待したいが、データの問題がある。考古学やコルネットに限定せず、もう少しありふれたものを対象にモノの進化を分析してみると面白そう。電子機器や回路、火器や自動車、エレベータ等。2018/08/17
遊動する旧石器人
2
2017年8月5日第1版第1刷発行。生物進化(遺伝)と文化伝達の最小限の共通性があると認識の上で、文化進化を考え、生物の中立進化に似たそれを、主に数理的手法を用いて、データを解析する初歩段階を提示した1冊。数理的手法の理解がなければ、読了するのが苦になるかもしれないが、ビッグデータ処理の必要に迫られる現代の1つの考古学的手法である。ただし、データの処理であり、データを作る過程は本書ではあまり触れられない。そういう意味では報告書考古学であり、報告書を過度に信用し過ぎている。データの二次的処理にしか見えない。2019/09/18
Junpei Ishii
2
著者の一人、井原は「現代的な文化進化の研究とは、文化の科学」なのだといいます。文化を進化的な対象として捉える営みの動機そのものが、文化の法則性や客観的な理解への欲求と結びついていると考えているようです。巻末のRによる幾何学的形態測定の解説が本気度を感じさせます。2017/08/26
うさを
1
ちびちび読み進めようと思ったら、あっさり読み終えてしまった。文化進化研究の、具体的な事例を用いての入門書という雰囲気。2018/03/29