出版社内容情報
部落差別に対処すべく行われた、同和教育、解放教育という二つの取り組みは何だったのか。「救われた」著者の回顧と総括。
上原 善広[ウエハラ ヨシヒロ]
著・文・その他
内容説明
差別は「同情融和」されるものではなく、闘うことで平等を勝ちとるという解放教育は、自らの出自をクラスで公表する「部落民宣言」やゼッケン登校を推し進めた。その体験の中で著者も家庭の崩壊から救われた。しかしある時期にその運動は退潮する―。各地の解放教育の現場を訪ね、「人権の季節」とは何だったのかを、思い出を辿りつつ検証する。
目次
序章 初めての記憶
第1章 部落民であることを宣言した日
第2章 河内とマカレンコ
第3章 兵庫・八鹿高校事件顛末
第4章 広島・世羅高校事件の転機
第5章 同和教育の現在を歩く
終章 解放教育を超えて
著者等紹介
上原善広[ウエハラヨシヒロ]
1973年、大阪府生まれ。大阪体育大学卒業。2010年、『日本の路地を旅する』で第41回大宅壮一ノンフィクション賞、『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Masakazu Fujino
3
この本が今、文庫本になって多くの人たちに読まれることは、大きな意味があると思う。上原善広氏は、自ら解放教育で救われたと言いつつ、その限界点や問題点も指摘している。今もう一度、同和教育・解放教育をきちんと受け止め活かしていく必要がある。2019/04/01
Rika Takizawa
2
この作者の人と私は同年代なんだけども、全然世界が違うのでびっくりした。同和教育の教科書ではわからない当時の空気感がよく分かった。「自らが受けた教育を乗り越えることに、教育の意味がある」というのは深い。2020/09/03
U-Tchallenge
1
著者自身の経験やフィールドワークを通して得たものから同和教育と解放教育について書かれた一冊。暗いというか辛い記憶をたどりながら考える内容となっている。しかし、著者は同和教育や解放教育を通して救われた、と話す。しんどい子を中心としながら集団づくりを行い、仲間づくりを進める。このことは現在でも大切にしたいことだ、と改めて思った。ある程度の知識がある方が読みやすいようには思う。それでもかつての光景を知るにはとてもよい内容のように思う。2023/11/16
bela
1
70年代〜80年代学校現場での部落差別問題をフューチャーした回顧録。広島の事件に至っては解放運動が特に激化した時代ともあって、部落解放同盟や教職員組合等それぞれの立場と思想や考え方が入り混じり悲しい結末を迎えてしまっていてとても驚いた。今の時代そして今後の学校教育において同和教育が必要か否かでなくこのような教育や運動があったという歴史だけは知っておいた方がイイと思った。2021/08/22
URYY
1
「路地」という表記が、やはり気になる。中上が虚構を成すために捻出したワードで、それが普遍的なものになっていることの危うさ。同対法という時限立法の後の解放、同和教育の様相の一端を知ることができるのはよいが。2018/11/27