内容説明
日本と韓国などが領有権をめぐって対立する竹島。それぞれが正当性を主張するものの議論は噛み合わず、韓国による占拠が続いている。本書は一六世紀から説き起こし、江戸幕府の領有権放棄、一九〇五年の日本領編入、サンフランシスコ平和条約での領土画定、李承晩ラインの設定を経て現在までの竹島をめぐる歴史をたどり、両国の主張を逐一検証。誰が分析しても同一の結論に至らざるをえない、歴史学の到達点を示す。
目次
第1章 「于山島」は独島なのか―韓国側主張の検証1
第2章 一七世紀に領有権は確立したか―日本側主張の検証1
第3章 元禄竹島一件―なぜ日韓の解釈は正反対なのか
第4章 「空白」の二〇〇年―外務省が無視する二つの論点
第5章 古地図に見る竹島―日本側主張の検証2
第6章 竹島の日本領編入―その経緯と韓国側主張の検証2
第7章 サンフランシスコ平和条約と政府見解の応酬
終章 「固有の領土」とは何か
著者等紹介
池内敏[イケウチサトシ]
1958年(昭和33年)、愛媛県に生まれる。京都大学文学部卒業。京都大学大学院文学研究科博士後期課程中退。博士(文学)。鳥取大学教養部助教授などを経て、名古屋大学大学院文学研究科教授。専攻、日本近世史、近世日朝関係史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Francis
20
日本・韓国間の領土問題「竹島問題」を論じた本。「竹島問題」を論じた本はナショナリズム、あるいは左右イデオロギー対立に影響された客観的でない本が多く、この種の本は敬遠していたが、この本は違う。日本・韓国の主張を同じ様に俎上にのせ、信頼できる文献に基づいて論証している。日韓双方が主張する「竹島は古来から一貫して我が領土」との主張は双方とも誤りであり、1905年の日本領編入以前の帰属については不明である、と言う事実を再確認するところからやり直すほかあるまい。学問的良心を貫く池内さんの姿勢に敬意を表する。2018/07/01
Porco
19
竹島について、ほとんど無知だったと知りました。日韓両政府とも、歴史学的に検討するとずいぶんいい加減なことを主張しているのですね。本当に問題となる論点は、1905年の日本領編入が正当なものかどうかということなのですね。2020/09/14
coolflat
17
竹島領有について、日韓の主張には、どちらかが一方的に有利だというほどの大きな格差はないという。あえて言えば、竹島を日本領にしたとする公文書が日本側にはあるが、韓国側にはそうした類の公文書がないと。けれどもこの差は決定的なように見えて必ずしもそうではないという。日韓両方それぞれ主張はあるが、事実、1910年8月29日に韓国併合してから45年8月15日の敗戦に至る間は朝鮮半島も日本の一部だったので、この期間の竹島が、日本の領土であったことは論じるまでもない。よって論点はサンフランシスコ平和条約の取り扱いにある2017/08/17
BLACK無糖好き
14
歴史研究者の職人の技が詰まった一冊。日本と韓国が領有権を主張する竹島(独島)。史実を辿りながら双方の主張の正当性を検証していくと、立証に無理があるにも関わらず、双方とも自分の方に利があるという主張を繰り返してきた構図が浮き彫りとなる。又、固有の領土論と歴史認識を関連付ける辺りは感嘆。歴史を遡って史実を丹念に積み上げながら事の本質を解き明かし、更に一般読者向けに分かり易く表現する、これぞプロの仕事! 2016/03/11
skunk_c
10
日韓双方の領有主張(ネット上の公式サイトに上がっているものなど)を俎上に載せ、実証的な手法で批判した書。結局1905年の日本の領有宣言がひとつの明確な主張となるが、日露戦争、日韓議定書といった時代を考えると、それを根拠にすることに抵抗があるとする。歴史的事実をあぶり出す手法には全面的な賛意を持った。正確な事実に基づき、領土という極めて政治的な問題はそこから交渉に入るべきであろう。政治によって歴史をゆがめるとどのような結果を招くかは我々は良く承知しているはず(70年前のことは忘れろという首相もいるが)。2016/02/03