内容説明
「賜物」(1938)。フョードルはロシアからベルリンに亡命し、初の詩集を出版したばかりの文学青年。家庭教師で糊口をしのぎつつ、文学サロンに顔を出し、作家修行に励むのだが、詩集の反応は薄く、父の伝記を書こうとしては断念する。しかし転居を機に下宿先の娘ジーナと恋仲になり、19世紀の急進的思想家、チェルヌィシェフスキーの評伝に取りかかる。ナボコフの自伝的要素を含んだ、ロシア語時代の集大成となる「芸術家小説」。「父の蝶」。「賜物」の主人公フョードルが語り手となり、鱗翅学者としての父親の功績を偲ぶ、なかばエッセイのような短篇小説。父が編纂した蝶類図鑑の理想的なまでの魅力を語り、父が提唱した新たな分類学の理論を解読しながら、フョードルは亡き父の像を浮かび上がらせてゆく。「賜物」の単行本に並録する予定で執筆されたという見方が有力だが、未完成のまま遺され、ナボコフの死後、息子のドミートリイによって発表された。
著者等紹介
ナボコフ,ウラジーミル[ナボコフ,ウラジーミル] [Nabokov,Vladimir]
1899年、サンクト・ペテルブルグで貴族の家に生まれる。1919年、ロシア革命により家族で西欧に亡命。ケンブリッジ大学卒業後、ベルリン、パリと移り住み、主にロシア語で執筆活動を続ける。1940年、アメリカに移住。ハーバード、コーネル大学などで教育、研究に携わる傍ら、英語でも創作活動を本格的に始める。1955年に英語で発表された『ロリータ』が大センセーションを巻き起こし、教師の職を辞す。1962年、スイスのモントルーに居を定め、1977年、78歳で死去
沼野充義[ヌマノミツヨシ]
1954年東京生まれ。東京大学教養学部を卒業、ハーバード大学スラヴ語スラヴ文学科に学ぶ。東京大学教授
小西昌隆[コニシマサタカ]
1972年神奈川生まれ。早稲田大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門はロシア文学。獨協大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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