内容説明
26歳の美容師・佐山道夫は、勤め先の美容室から独立するため、証券会社の社長夫人・波多野雅子と関係を持ち、出資にこぎつける。さらに、雑誌「女性回廊」の編集者・枝村幸子を誘惑し、彼女の口利きで人気タレントのヘアデザイン担当に。金とマスコミの力で一躍有名になった道夫だったが、夫に預金通帳を見られた雅子から返済を迫られ…。男の野望と女の情愛が絡み合う傑作長編。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909‐1992。福岡県小倉市(現・北九州市小倉北区)生れ。給仕、印刷工など種々の職を経て朝日新聞西部本社に入社。41歳で懸賞小説に応募、入選した『西郷札』が直木賞候補となり、1953(昭和28)年、『或る「小倉日記」伝』で芥川賞受賞。’58年の『点と線』は推理小説界に“社会派”の新風を生む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
53
美容師が女性たちの援助をもとにのし上がっていく社会派ミステリ。主人公は後のカリスマ美容師を彷彿させ、清張の社会に対する観察眼の鋭さ、先見の明に驚かされる。女性たちは主人公の飽くなき野望の犠牲になっているようでありながら、主人公との関わりの中で彼女たちも変貌していく。特に、女性編集者の変貌ぶりがすごい。2024/01/21
hatayan
37
松本清張の長編小説。今で言うところのカリスマ美容師の佐山が社長夫人や女性編集者を巧みに利用してスターダムに駆け上がるも、利用価値のなくなった女性を容赦なく切り捨てる非情が災いし、最後は破滅するというあらすじ。上巻は佐山が野望を叶える一方で、社長夫人の雅子から借金の返済を迫られて困った佐山が大胆な工作に出るところまで。 下巻で佐山の弱みを握り強引に婚約をしようとする枝村幸子が佐山に感化され、会社を退職する場面で捨て台詞を吐く場面が痛快でリアルです。2021/04/02
佳乃
29
女を利用してまで、上に伸し上がりたいのか佐山・・・と怒りがこみ上げてきます。何か女を引き付けるものを持っているからこそ、女も佐山にドップリとなってしまうのだろうけど、計算高い人って嫌いだ。女を狂わす男も嫌いだ。そして、気になる下巻へといきますか。2016/01/15
こういち
16
「認識は、常に眼前の存在だ」。著者が描く人間の群像劇には飾りも遠慮も無い。溢れんばかりの好奇心に満ち、自らの欲望に貪欲だ。それは、何処までも駆け上がることができると信じた時代を象徴する。自由を求めて全力で叡智を傾けていたにも関わらず、いつしか情報の網が頭上を覆い、顔無き声に恐れ、互いを打ち消し合っていく。本作品に色付く、セピア色の昭和に思いを寄せながら、本当の幸せの在るべき姿を考えてみたい。2016/04/30
jeltong
6
この作品、ジャケ買いです。装丁があまりにもきれいでキラキラしてたので手元に置いて眺めていたい衝動に駆られたのと作者が作者だけに大はずれはないと思ってのことです。松本清張氏の作品に共通していると思うことですが、主役(主犯)の生い立ちに鍵がありそうな?検事氏の洞察力は神がかり的ですね。作品の発表から時間がたっている作品らしく、会話の言葉使いのリズムがおっとりしている感がありました。現在の売れっ子作家さんだとどう書くのかな?などと想像しながら活字を追うのも一興かと。。下巻へまいります。2016/02/18