出版社内容情報
近代日本の学歴社会の進展において、岩波書店にはどんな役割があったのか? アカデミズム、インテリゲンチャと出版文化の関係を解読
本書は、岩波書店の創業者である岩波茂雄をめぐる分析『岩波茂雄 成らざりしカルテと若干の付箋』(村上一郎著)と、解説(竹内洋)からからなります。
信州人である岩波茂雄はいかにして出版社を起こし、出版界を牛耳っていくようになったのか? その過程で何を利用し、何を切り捨てたのか? 「岩波文化」と呼ばれる一大潮流を作り上げ、日本の教養主義を牽引したが、そこに問題はなかったのか?
おりしも、岩波書店の興隆は、近代日本の「学歴貴族」の栄光の時代に呼応しています。近代日本のアカデミズムは外来で急ごしらえのところがあり、しっかりと熟成されたものではなく、見せかけの「前衛」で乗っ取ることが可能だと見抜いていたのが、岩波茂雄であると村上一郎は述べます。そして、日本のインテリゲンチャのあり方の底の浅さを見抜いています。
教育社会学者の竹内洋氏は、日本のアカデミズムのありようと教養主義の盛衰、そして出版業というものが、文化産業としてどのような構造を持つのかを、『岩波茂雄』を土台に据えて、問い直し、解明していく、一冊で二冊分の内容を持つ本です。
はじめに 村上一郎と『岩波茂雄』(竹内洋)
「岩波茂雄 成らざりしカルテと若干の付箋」(村上一郎)
1 予断
2 信州人
3 岩波は何を避けたか?
4 岩波の”戦争と平和”
5 岩波と部下たち
6 岩波の光栄と悲惨
7 おわりに
参考文献の主たるもの
岩波茂雄年譜
解説 教養主義の時代(竹内洋)
【著者紹介】
村上一郎(むらかみ・いちろう)
1920-1975。東京商科大学(現・一橋大学)卒業。文芸評論家、歌人、小説家。著書に、『北一輝論』『振りさけ見れば』、『村上一郎著作集』(全十巻)など多数ある。
内容説明
村上一郎が著した、熱情的で文士的な評伝『岩波茂雄 成らざりしカルテと若干の付箋』は、岩波書店の深層と出版産業の構造に肉迫する。日本型教養は、なぜ泥臭いのか?出版文化とアカデミズムの間には、正統性調達の「相互依存」がなかったか?岩波文化と講談社文化の対立の図式は正しいのか?近代日本社会史を再考する試み。
目次
学術文庫版イントロ 村上一郎と『岩波茂雄』
岩波茂雄―成らざりしカルテと若干の付箋(予断;信州人;岩波は何を避けたか?;岩波の“戦争と平和”;岩波と部下たち ほか)
著者等紹介
村上一郎[ムラカミイチロウ]
1920‐1975。東京商科大学(現・一橋大学)卒業。文芸評論家、歌人、小説家
竹内洋[タケウチヨウ]
1942年生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。京都大学教授等を歴任して、関西大学、京都大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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