講談社学術文庫<br> 岩波茂雄と出版文化―近代日本の教養主義

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講談社学術文庫
岩波茂雄と出版文化―近代日本の教養主義

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  • サイズ 文庫判/ページ数 164p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062922081
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0136

出版社内容情報

近代日本の学歴社会の進展において、岩波書店にはどんな役割があったのか? アカデミズム、インテリゲンチャと出版文化の関係を解読

本書は、岩波書店の創業者である岩波茂雄をめぐる分析『岩波茂雄 成らざりしカルテと若干の付箋』(村上一郎著)と、解説(竹内洋)からからなります。
信州人である岩波茂雄はいかにして出版社を起こし、出版界を牛耳っていくようになったのか? その過程で何を利用し、何を切り捨てたのか? 「岩波文化」と呼ばれる一大潮流を作り上げ、日本の教養主義を牽引したが、そこに問題はなかったのか?
おりしも、岩波書店の興隆は、近代日本の「学歴貴族」の栄光の時代に呼応しています。近代日本のアカデミズムは外来で急ごしらえのところがあり、しっかりと熟成されたものではなく、見せかけの「前衛」で乗っ取ることが可能だと見抜いていたのが、岩波茂雄であると村上一郎は述べます。そして、日本のインテリゲンチャのあり方の底の浅さを見抜いています。
教育社会学者の竹内洋氏は、日本のアカデミズムのありようと教養主義の盛衰、そして出版業というものが、文化産業としてどのような構造を持つのかを、『岩波茂雄』を土台に据えて、問い直し、解明していく、一冊で二冊分の内容を持つ本です。

はじめに 村上一郎と『岩波茂雄』(竹内洋)

「岩波茂雄 成らざりしカルテと若干の付箋」(村上一郎)
  1 予断
  2 信州人
  3 岩波は何を避けたか?
  4 岩波の”戦争と平和”
  5 岩波と部下たち
  6 岩波の光栄と悲惨
  7 おわりに
 参考文献の主たるもの
 岩波茂雄年譜

解説 教養主義の時代(竹内洋)

【著者紹介】
村上一郎(むらかみ・いちろう)
1920-1975。東京商科大学(現・一橋大学)卒業。文芸評論家、歌人、小説家。著書に、『北一輝論』『振りさけ見れば』、『村上一郎著作集』(全十巻)など多数ある。

内容説明

村上一郎が著した、熱情的で文士的な評伝『岩波茂雄 成らざりしカルテと若干の付箋』は、岩波書店の深層と出版産業の構造に肉迫する。日本型教養は、なぜ泥臭いのか?出版文化とアカデミズムの間には、正統性調達の「相互依存」がなかったか?岩波文化と講談社文化の対立の図式は正しいのか?近代日本社会史を再考する試み。

目次

学術文庫版イントロ 村上一郎と『岩波茂雄』
岩波茂雄―成らざりしカルテと若干の付箋(予断;信州人;岩波は何を避けたか?;岩波の“戦争と平和”;岩波と部下たち ほか)

著者等紹介

村上一郎[ムラカミイチロウ]
1920‐1975。東京商科大学(現・一橋大学)卒業。文芸評論家、歌人、小説家

竹内洋[タケウチヨウ]
1942年生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。京都大学教授等を歴任して、関西大学、京都大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

夜勤中の寺

58
村上一郎に興味があって読む。村上一郎が書いた岩波茂雄の短い評伝に竹内洋が詳細な解説を加えた1冊である。去年文庫になった『草莽論』と『幕末』ぐらいしか読んだ事がないが(この2冊もじきに絶版になるだろう)、私は村上一郎の文章が好きである。この人の論考をもっと読みたい。この人の独特の好悪の情をもっと知りたい。岩波茂雄の美点を挙げてなお否定したり、批判しながら長所を掬ったり。吉野源三郎や小林勇にも触れており、山本夏彦『私の岩波物語』を思い出す。繰り返し読める文章である。おすすめ。2019/06/23

崩紫サロメ

20
本書は著者が割腹自殺を遂げて数年後の1979年に刊行され、2013年に竹内洋の解説付で出版された。岩波茂雄の評伝としては、安倍能成などの先行するものと異なり、網羅的ではなく、愛憎入り混じって岩波と岩波文化に肉迫する。また、竹内の解説を通して村上が存命の頃の日本の知に対する捉え方と、その後の変化を知ることができる。村上自身岩波=エリート、講談社=大衆という通念を修正していたが、本書が講談社学術文庫から出たことについても、考えさせられるものがある。2022/02/12

やまやま

14
著者の岩波に対する情念は、就職時やパージされていた時代などをはじめ数多くの直接接触、特に組合活動での岩波職組との対論や糊口をしのぐ仕事口の紹介を受けたといった経験から大変複雑なものとも思える。ただ、あえて抜き出してみると、人々に西欧的な知識教養を提供するということが東京大学を頂点とした(知的)ヒエラルヒーを維持することに大きく繋がることを一つの大きな課題にしているように感じた。学術なんていうものがなぜ世間で後生大事にされるのか、このアンビバレントな気持ちと知的欲求の谷間をうまく流れたのが岩波ではないか。2020/12/03

壱萬弐仟縁

14
岩波氏は、人脈を「資本という媒介をもってのグループの再構成」にした(20-21頁)。窺窬(きゆ35頁)なんていう言葉は初めて知った。村上先生のレヴェルの高さを感じた。「隙を伺い狙うこと」(広辞苑)。へぇ。書店経営もそうした部分が大きいのだろうか。信州人とは、自国の鬱屈にみちた勤勉・熱意・闘魂・感覚の新しさを独自と信じこんでいる(42頁)。独善的ともいえるが確かにそうした県民性はある。勘違い(苦笑)。バタ臭く、泥臭い、岩波文化(129頁他)。文化産業は、経済資本→象徴財→象徴的利益→経済的利益(144頁)。2014/01/30

ネムル

11
戦前・戦後の教養に興味があって読んでみた。著者の愛憎半ばパッション系評伝としてすこぶる楽しく読んだが、前知識がないとわかりにくい。漱石のデモーニッシュな側面を脱臭して、教養小説に作り替えた、岩波の教養も講談社の民衆も根は同じというあたり興味深いが、これだけ読むぶんにはまだ納得ともいえない。やはり素直に竹内洋か山本夏彦『私の岩波物語』あたりにいっとこう。2017/12/20

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