内容説明
甲骨文字を読める人が少ないのは、甲骨文字に対する印象以外にも原因がある。それは、日本語で書かれた入門書が存在しないことである。甲骨文字を文字の単位で解説した書籍はそれなりにあるものの、文法にまで筆をのばして実際に文章を読めるように解説したものは見当たらない。そのためだろうか、中国史や中国文学を専攻する大学生が甲骨文字の研究を始めても、早々に挫折するケースが目立つ。著者は甲骨文字の研究に携わる者として、こうした現状を前々から不満に思っていた。それが動機となって執筆したのが本書である。そういうわけで、本書は、一般読者にむけた甲骨文字の解説書であると同時に、本邦初の甲骨文字研究の入門書としても機能するような構成になっている。
目次
第１章 甲骨文字とはなにか
第２章 入門編 文字を読む
第３章 中級編 難しい文字を読む
第４章 文法編 甲骨文字の文章のしくみ
第５章 応用編 文章の解読
解読のための甲骨文字辞典
著者等紹介
落合淳思［オチアイアツシ］
１９７４年生まれ。立命館大学文学部卒業、立命館大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、立命館大学非常勤講師。専門は甲骨文字と殷代史（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BIN
7
甲骨文字入門。よくある甲骨文字の本はこの文字は今の漢字で言うとなにがしと言うことと語源だけだが、この本では甲骨文の読み方まで教えてくれている。基本は漢文と同じだけどちょっとしたルールがある。甲骨文字の問題もあり、ちょっとしたパズルみたいなもんで、後は想像力が必要でしたが面白いものでした。左右反転したバージョンがあるのはなかなかトリッキー。私の名前は簡単な漢字ばかりなので甲骨文字で書けそう（巻末の甲骨文字辞典にはなかったが、白川静さんの「常用字解」にはあったので書けました）。2020/06/22
みのくま
3
本書は甲骨文字読解の問題が出題されるなど、かなり実践的な内容となっている。個人的には「甲骨文字とは？」という点について知りたかったので、少々当てが外れたきらいがあるがそれでも興味深く読んだ。甲骨文字は現存最古であるが文法などが整い過ぎており最古ではないという点や、甲骨占卜は亀裂により吉兆を占い、その記録して甲骨文字が残っているという点はかなり面白い。甲骨文字はかなりダイレクトに漢字に引き継がれており、当然甲骨文字にあった呪術的な要素も同様に引き継がれていると見てよいだろう。漢字の持つ呪術性について考えたい2023/04/25
斑入り山吹
2
本高砂屋のお菓子をいただいたらその和菓子用の包装紙が素敵だった。綿貫宏介氏の金文だかの字体が素敵で、どうしても読みたくなってしまったのだ。それでこの本をまた開いた。前回読んだときは後半は流してしまったところもあったが、今回はかなり真剣に読んだよ。でも包装紙はまだ読めないものもある。金文、篆書も知りたくなってしまった。 で、再読してどうだったか、というと、落合氏の突き抜けた考え方が楽しい、ということ。はっきりいうので敵もいそうだけどね。2010/02/10
guanben
1
甲骨文字入門！読み方やその歴史の他に、文字には象形、指事、会意、形声など成り立ちの違いがあること、ある程度体系的に文章が残されているので記録に残される以前から文字は存在していたこと、占いの内容が記載されていること等を解説。よく解読したもんだと感心した。ちなみに表紙の字は、「王獲白馬(王、白馬を獲たり)」と読むとのこと。2022/12/18
in medio tutissimus ibis.
1
甲骨文字とそれで書かれた文章の読み解き方。文章と言っても残っているのは占いに関する文章だけで定形が決まっているのでルールさえ押さえれば（保存や拓本の状態がよく字がきれいに読めるなら）そんなに難しくはない。漢文っぽく読めてしまう。文法的文化的なことを抑えた上で、占いは当時の政治的な決定の儀式なので都合の悪い部分を糊塗していたりするのに注意して読む。神秘性とかが剥ぎ取られて、単にお役所の文章を読んでいるんだなぁという感慨が湧く。甲骨文は現存最古だが、文字も文章もかなり発達していて、それ以前が残ってないのは残念2020/08/09
-
- 和書
- 教育政策の課題
