講談社選書メチエ<br> 教会の怪物たち―ロマネスクの図像学

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講談社選書メチエ
教会の怪物たち―ロマネスクの図像学

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  • サイズ B6判/ページ数 350p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062585682
  • NDC分類 523.37
  • Cコード C0322

出版社内容情報

神に祈りを捧げる場所におかしな動植物がいるのはなぜか? 神の驚異の御業への賞賛と民衆の心性が交差するロマネスク教会が面白い!

教会をよく観察してみると、怪物、魔物、実在のまた想像上の動物、植物などのシンボルに満ちた空間であることに驚きます。よく知られたものだけでも、口から植物を生やしているグリーン・マン、双面のヤヌス、人魚、ドラゴン、グリフォンなどです。もちろん、キリストや聖人などの図像もあります。それらのイメージは、絵画や柱頭彫刻、祭壇やアーケードのレリーフといったかたちで、教会にちりばめられ、まるで一枚の世界地図を体現しているようです。
なぜ、怪物が教会にいるのか。二つの尾をもつ人魚を例に考えてみましょう。人魚は豊饒の表象であると考えられていたようです。というのも、人魚の原型は、ギリシア神話の『オデュッセイ』や『アルゴナウティカ』に登場する「キルケー」という魔女で、中世にまで生き延びていた女シャーマンだからです。キルケーが怪物に性を与えるように、自らの生成の場所である「子宮」を誇示するような彫刻となっているのです。また、グリーン・マンもバッカス的な祭礼に結びつく、豊饒の男版のシンボルと考えられます。
本書では、とくにこういった怪物的シンボルが横溢するロマネスク教会を中心に、解読をしていきます。キリスト教と一見無縁に思われる不思議なイメージの中に、失われた民衆の精神史を探ります。また、実際の教会巡りの際に、役立つ図像事典の性格ももたせ、旅行ガイド的要素も盛り込みます。

第一章 怪物的図像とイコノロジー的アプローチ
・従来のイコノロジー研究の限界
・ロマネスク美術の三つの境界侵犯
・新しいアプローチの可能性
第二章 神の創造の多様性としての怪物・聖なる怪物
・セビーリャのイシドールスによる「驚異的なもの」 
・神の被造物
・「聖性の顕現」
・反人間形体主義
第三章 怪物的民族と地図
・中世の写本における怪物的民族の図像
・スーヴィニーの八角柱
・床モザイク上の怪物的民族
・ケンタウロス、ミノタウロス、サテュロス
・モデナ大聖堂の怪物的民族
・言語上の誤解が生んだ怪物
・物と動物の境界を越える怪物
・「他者」の表象としての怪物
第四章 「自然の力」の具現化としての怪物
・セイレーンとワイルドマン
・グリーンマン
・「四大」と怪物
・「風」の怪物
第五章 世俗世界を表す蔓草
・モデナ大聖堂のピープルド・スクロール
・キールティムカとグリーンマン=オケアノス
・怪物的形体の装飾的生成
・ロマネスクの美意識と蔓草
第六章 悪徳の寓意としての怪物から辟邪としての怪物へ  
・悪魔としてのハイブリッドの怪物
・異教徒や悪徳のアレゴリーとしてのハイブリッド
・悪徳に満ちた世俗の海
・変身について
・悪魔払いされる怪物
・不安の克服の手段
・グロテスクと笑い
・笑いと辟邪
第七章 古代のモティーフの継承と変容、諸教混淆
・セイレーン=人魚と古代美術
・イタリアの紋章と人魚
・ロマネスクの人魚と諸教混淆
・新世界の諸教混淆
・セイレーンと音楽
第八章 怪物のメーキング
・蛇としてのドラゴン
・ドラゴンの翼
・ドラゴンの足と口から吐く火炎
・尾の力
・蝮、バジリスクなどとの混同
結び 怪物的中世
・西洋中世研究における怪物
・怪物的中世の見直し
・イコノロジーと領域横断的アプローチ
・カルチュラル・スタディーズと怪物研究
・日本の妖怪研究
・人間中心主義を脅かす怪物

【著者紹介】
尾形希和子(おがた・きわこ)1959年生まれ。大阪外国語大学卒業。東京外国語大学大学院修士課程修了。沖縄県立芸術大学講師を経て、現在、同大学教授。専門は、ロマネスクの図像学、西洋美術史。
著書に、『レオノール・フィニ 境界を侵犯する新しい種』(東信堂)、『イメージの解読 怪物』(共著・河出書房新社)、論文に「遙かなる石の記憶」など、訳書に『バロックのイメージ世界綺想主義研究』(共訳、みすず書房)、『スキタイの子羊』(博品社)などがある。

内容説明

イタリアに点在するロマネスク教会。聖堂に跋扈する恐ろし気でコミカル、猥雑な怪物たち。なぜそれは聖堂内に描かれるのか?そして何を意味するのか?「単なる装飾」として片付けられてきた怪物たちを民族学や心理学的アプローチを加え読み解く、新しいイコノロジー。グリーンマン、人魚、グリフォン、犬頭人…イタリアン・ロマネスク・ガイドの決定版!写真図版、多数収録。

目次

第1章 怪物的図像とイコノロジー的アプローチ
第2章 神の創造の多様性としての怪物・聖なる怪物
第3章 怪物的民族と地図
第4章 「自然の力」の具現化としての怪物
第5章 世俗世界を表す蔓草―ピープルド・スクロール
第6章 悪徳の寓意としての怪物から辟邪としての怪物へ
第7章 古代のモティーフの継承と変容、諸教混淆―ドラゴンとセイレーン

著者等紹介

尾形希和子[オガタキワコ]
1959年生まれ。東京外国語大学大学院地域研究研究科修士課程修了。沖縄県立芸術大学教授。専門は西洋中世美術史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

65
欧州などの教会には本当に様々な怪物のような像がありますし、宗教絵画などを見ても様々な竜や怪物などが描かれています。このようなものが何を意味するのかを明快に説明してくれています。これが図像学というものなのでしょうね。少しこのような本を読んで海外旅行などをすると興味がわいてくる気がします。2015/06/28

Koning

26
ロマネスク建築にごってりとある異形の怪物達の彫刻。このイメージがどう形作られてきたか?という図像学ってことなんだけど、ファンタジーに登場するあれこれとその源流。中世のイメージの脹らみ方の凄さ(まーこじつけとかお約束だし)が楽しい。美学屋さん的にそうだろうけど、古代オリエントをた的にはそこは突っ込みを入れたいとかもあるのはお約束なんだけど(え)、いろんなレベルで楽しめる本というのは間違いないです。いいよこれ。2014/02/10

Moca

23
よく考えると、「怪物・妖怪=悪魔」と結びつけるイメージもあるが、良い面・聖性のある怪物が存在することで、(ある意味)宗教の価値観が大きく変わるものだ。2021/10/04

Moca

22
例えば、グリフォンやユニコーン等の聖なる怪物たちも聖書内に存在している。 ギリシャ神話では、ゼウスは色んな獣に変身し、色んな女達と関わり、ハーレム的なゴット(神)である。 ケンタウロス等ギリシャ神話の神として存在しているのだ。 最も驚いたことは、モーセが角を生えているところである。 え?鬼?悪魔?ちょっと、預言者がそんな化け物だったなんてと驚愕してしまうけれども、ユニコーンの角で考えると、聖性的なものと考えられる。2021/10/04

Moca

20
特にキリスト教でタブー視しているのが、“ハイブリッドの怪物”である。つまり、獣と人間をかけ合わせた雑種は、悪魔とみなされることが、この本書の印象的な部分であり、実に興味深い。 なかには、ギリシャ神話で生み出された神となる多様性のある怪物も存在するのだ。 怪物というのは、異形の獣や亜人等といった悪徳で悪魔的なものだけではなく、その一部として、“神”としての怪物もいるのだ。2021/10/04

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