出版社内容情報
南北朝の動乱期に、武力によらない仏国土の理想郷を目指した足利直義。兄尊氏とともに室町幕府の基礎を築いたにもかかわらず、最期は兄に毒殺されたとも伝えられる悲劇の人物の政治・思想・文化に迫る。
内容説明
室町幕府初代将軍足利尊氏の同母弟、足利直義。尊氏が恩賞給付権を握り、直義が内政権を握る「二頭政治」により幕府の基礎を築いた。しかし、法秩序を重んじる直義は、武家の急進派勢力との抗争により失脚、最期は兄に毒殺されたとも伝えられる。『太平記』の記述によりゆがめられてきた直義像を再検証。『夢中問答』の発問者として仏教に深い造詣を示し、仏法による理想の国家を創ろうとした稀有な武将の実像を明らかにする。
目次
序章
第1章 直義登場
第2章 二頭政治の時代
第3章 観応の擾乱
第4章 鎮魂と供養
第5章 直義の精神世界
第6章 『夢中問答』
第7章 神護寺の足利直義像
終章
著者等紹介
森茂暁[モリシゲアキ]
1949年、長崎県生まれ。九州大学大学院博士課程中途退学。福岡大学人文学部教授。文学博士(1985年九州大学)。専門は中世日本の政治と文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はるわか
18
しずかなるよはの寝覚に世中の人のうれへをおもふくるしさ(風雅和歌集)。政治権力がピークに達したときの和歌、深い苦悩。驚くべき速さで強大な権力を獲得し、突然に失脚。伝統尊重型の人間で、冷徹かつ禁欲的。鎌倉将軍府執権、中先代の乱、武家勢力の結集、後醍醐との決別、二頭政治。観応の擾乱:急進派(高師直)と守旧派(足利直義)の対立抗争。直義嫡男如意王の誕生と夭逝。どちらが勝ったのか分からない状態に。観応の擾乱は直義があわよくば幕府の首領の座を得ようとしたところに発端。直義毒殺。怨霊鎮魂、神格化。醍醐寺、三宝院賢俊。2016/06/28
keint
9
足利直義について、人物像および二頭政治の実態とその破綻を多様な史料から考察している。特に和歌や宗教、絵画まで踏み込んだ思想の分析は著者の強みが発揮されている。政治や宗教にも鎌倉的保守性を帯びており、夭折した息子の誕生により政治的野心を抱いた直義という視点は今までなかったものである。2020/08/09
umeko
8
「日本の歴史〈9〉南北朝の動乱 (中公文庫)」の足利直義が素敵だったので、ミーハー気分で掘り下げてみた。どのような政治を目指したのか、仏教との関わりなど、私なりの新たな発見があった。2017/06/12
邑尾端子
8
著者は南北朝史の第一人者とも言うべき研究者であるが、本書には研究者としての学問的立場を超える足利直義への熱い思い、もっと彼の業績を多くの人に知ってほしい、もっと再評価してほしい、といった、まさしく「足利直義という人間には恋を感じました」ともいうべき情熱を感じた。かくいう私も足利直義に恋に近いような興味を抱く一人ではあるが。彼は「室町幕府を創った男」でありながら、また一方で鎌倉幕府の残滓を背負い続け鎌倉的な社会への回帰を志向し続けた人間でもあった。鎌倉時代の真の終焉は彼の死であったという筆者の言葉が印象的2015/05/08
onepei
4
足利直義を精神世界や花押、肖像画まで取り上げ広く論じておもしろかった。もし直義が死ななかったら、(室町)幕府というものは早くに空中分解していた気がする。なんとなく豊臣秀長と比べてしまう。2015/03/25
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