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岩波現代文庫
日本語を書く部屋

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  • サイズ 文庫判/ページ数 221p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006021917
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0195

出版社内容情報

日本語は日本人として生まれた者たちの独占的所有物ではない。「コトバ=民族」という単一のイデオロギーに反して、外国人が「日本語を書く」ということは、せつなくも本物の<越境>行為だ。日本語を母国語としない西洋出身者で日本語による作家としてデビューしたアメリカ人の、体験的日本語論と<越境>をめぐる鮮烈なエッセイ。

内容説明

「コトバ=民族」という概念に反し、外国人が「日本語を書く」ということは、せつなくも本物の越境行為だ。日本語を母語としない西洋出身者で初の日本文学作家となった俊英による体験的日本語論と万葉集から現代の最先端に至るまで、表現の生命を探し求めた鮮烈なエッセイ。西洋語から非西洋語へと越境した著者の経験は、日本語はすべての人に開かれているのだという実感を、私たちのものとする。

目次

1(ぼくの日本語遍歴;塀の外で;想像への畏敬―大和路をゆく;伝記なき先駆者たち―表現そのものの歴史;日本語を書く部屋;言霊の再発見;「日本にいる」ことのアイロニー;日本語の「所有権」をめぐって;「世界文学」から「ワールド・フィクション」へ;「表現のことば」新たな輝き)
2(太宰治、「津軽」への旅;安部公房の「満洲」;大庭みな子の「アメリカ」;文学にとって「原爆」とは何なのか:女の「戦後文学」;“談話”『古事記』はひとつの奇跡である;大江健三郎のノーベル賞・夜話;日本語のスケールに触れたとき:司馬遼太郎の「新宿」;「和訳」された大陸;乖離と「アイデンティティ」―「在日」を見直す)
3(越えてきた者の記録;野茂英雄、あるいは「越境」の勝利;新宿へ、アジアの都市へ;越境の時代;特快列車に乗って;北京語の聞こえる部屋)

著者等紹介

リービ英雄[リービヒデオ]
1950年アメリカ生まれ。少年時代を台湾、香港で過ごし、67年に日本に初めて住む。その後日米往還を繰り返し、プリンストン大学大学院博士課程修了、プリンストン大学、スタンフォード大学で日本文学の教授を務める。四〇歳直前から日本に定住し、日本語による作家として活躍。92年、『星条旗の聞こえない部屋』(講談社)でデビュー。西洋世界から非西洋世界へ越境した書き手として注目される。主著『天安門』『千々にくだけて』(大佛次郎賞)『仮の水』(伊藤整文学賞)(以上、講談社)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

31
実に達意の日本語を書く方だ。そして、彼が眼差しを向ける日本語や日本人についてもいま一度ぼくは謙虚に受け取る必要があると思った。こうした「外人」(特にアメリカ人)のエッセイとはときおり、グローバルスタンダードが保証する絶対的な正解として読まれかねない危うさをはらんでいる(あるいはその裏返しとして「絶対的な愚論」とも切り捨てられかねない)。だが、リービ英雄自身がナマの『古事記』『万葉集』に触れたようにぼくもまたリービの文に触れて、そこから虚心に読み取る作業を重ねていくべきだと思う。ぼくを縛る偏見を解毒するため2023/09/13

チェ・ブンブン

20
リービ英雄はどうやら、一文が異様に長い小説や短い文の中に沢山の情報を詰め込む日本語の凄さに惹かれたのだろう。確かにTwitterで何か書くとき、日本語って140字で情報沢山ブチ込めるからスゲーなと思った。2015/04/07

三柴ゆよし

13
アメリカに生まれ、幼少期を台湾の日本家屋で過ごした男が、アメリカで日本の文学に出会い研究者となり、午前は『万葉集』、午後は大江健三郎を講じる生活のなかでアメリカと日本の往復を重ねるうち、日本に定住し日本語で小説を発表することになる。リービ英雄の履歴は三つの言語とともにある。英語、中国語、そして日本語。その彼が特に日本語に魅かれるのはなぜか。リービはそれを、漢字とひらがなが混在した日本語の書き言葉の複雑さによって説明する。アメリカと中国とは言うまでもなく数多の民族がひしめきあう国だが、(コメントに続く)2014/09/10

Bartleby

12
日本語を母語としない人、または日本で生まれ育ったが今は日本にいない人が書く日本語が好きだ。本書の著者は前者。日本語が水を得た植物のように新鮮で気に入った。言葉の選び方にとても自覚的で、紋切り型の表現とは微妙にズレている。読みながらそこにいちいち発見があって目を見開かされるようだ。日本語はマイナー言語だから、また何より日本はいまだに移民を使い捨ての労働力としてしか考えていないからなかなか難しいかもしれないが、日本語をハックする人がどんどん増えてほしい。2023/03/22

かりんとー

8
日本に何のルーツもない外国人が日本語で小説を書く。すごいね。私たちは「中にいる」から見えないものも多いのだ。外から来たもの、疎外されてきたものは客観的に物事を見ることができる。彼のほかの作品も読んでみたい。 (松岡正剛千夜千冊80冊目)2023/06/15

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