内容説明
平安末期に始まる内乱の時代の経験は、いくつもの「いくさ物語」となって語られていった。そこでは英雄が華々しく活躍し、合戦が生き生きと描かれる一方で、敗者や女たちの悲痛な姿が胸を打つ。『保元物語』『平治物語』『平家物語』『承久記』の代表的四作品を縦横に行き来しながら、そこに時代の刻印を受けた文学の誕生を読み取っていく。
目次
序章 いくさ物語の読まれ方
第1章 力を渇望した時代―いくさ物語の背景
第2章 戦いの面白さを語る―勝敗劇への関心
第3章 いくさは何をもたらしたか―結果への視線
第4章 物語の生まれるところ―異次元の世界へ誘う技法
第5章 求められたものは―戦争の体験から
第6章 いくさ物語の強さ―時代を超えて
著者等紹介
日下力[クサカツトム]
1945年新潟県佐渡生まれ。1971年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。博士(文学)。専攻は中世軍記文学。現在、早稲田大学文学学術院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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浅香山三郎
13
保元~承久の乱の時代の軍記文学を貫く心性を分析する。史実と文学の組み立てとの間に操作があるのは漠然と知つてゐたが、テキストを比較して見渡す本書の方法により、作者らと物語の享受者たちの思ひの性質がより明確になつた。平易な文章なので、さらつと読めてしまうが、内容には不思議なぎつしり感がある。2018/06/10
May
5
軍記物に史料としてではなく物語としてアプローチする。今ある形になったのは、いかなることが形象されたのかなどを、古態本との比較等を通して見ていくのだけれど、そこから見えてくるのは、現代と変わらない人の姿。そして、「命は限りあるもの」という慣用句が、今とは違う意味(心よりほかの命)が込められていたことなどを通して、現代とは違う人(社会)の姿も見ることができた。これまで史料として見る方法論ばかり目にしてきたが、こういうアプローチがあることを知ることができて、大変良かった。2023/01/08
keint
1
軍記物語が西洋の叙事詩とはまた違う側面を持つということが参考になった。2019/07/01
DEN2RO
1
『平家物語』に代表される中世軍記物語4作品について、物語の中のいくつもの挿話を紹介し、その史実との違いを検証しています。その中で、出来事が物語になり、歴史が文学へと昇華してゆく姿が描き出されます。英雄の死や薄命の佳人のいくさ語りに人々が求めたものが明らかにされます。2011/03/05
笠井康平
1
なぜか2冊手元にある。2013/02/11