出版社内容情報
律令国家解体後に生まれた王朝国家と、東国に生まれた武家政権。中世国家の「二つの型」の相剋を読み解く。
内容説明
律令国家解体のあとに生まれた王朝国家と、十二世紀の末、東国に生まれた鎌倉幕府。これらを「二つの型」とし、相互規定的な関係のもとに展開された「権力の二元性」の実態を克明に追いつつ、中世国家の構造と特質を読み解く。本作の原点ともなった論文「室町幕府開創期の官制体系」を併録する。
目次
日本の中世国家(律令国家について;王朝国家;鎌倉幕府;王朝国家の反応)
室町幕府開創期の官制体系(政治機関の個別考察;尊氏・直義の権限区分と官制;官制体系の政治的背景―むすびにかえて)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MrO
4
詳細な史料の読み込みを伴いながら、論理が一貫していて読みやすい。2020/03/01
れぽれろ
2
鎌倉時代を中心とした中世の王朝と幕府の変化を詳述する実証本。律令制が崩れた王朝国家は院政と家業世襲体制に到り、鎌倉幕府も得宗の世襲と専制に至る。システムが時を経て世襲・専制化するのは世の常か。一読書人として面白く読みました。2022/06/30
R
2
丹念に史料を読み込んでいき,そこから得られた情報をもとに鎌倉幕府の成立の過程や王朝国家の変容を明らかにしていく。歴史学の成果から想像される過去の世界は躍動感にあふれ,多くの人々を魅了するが,歴史学自体は非常に骨が折れて目に見える成果は少ない。誰も読まないような史料を探し出し,比較検討し,史料群の中に位置づけていく。必要な史料探し出すだけでも一苦労で,見つからないかもしれない。しかし,細かい作業を重ねて積み上げられたものはゆるぎがなく,説得力がある。2022/02/07
spanasu
2
王朝国家は、検非違使や蔵人所といった令外の官のもとで既存の機構を含めて再編され、小槻氏のような卑姓氏族がそこの官職を独占し付属する所領を私領のように扱い、官司請負が進むとする。もう1つの中世国家の型が東国の武士政権であるとする。非権門体制論の総本山たる東大系の中世国家像が描かれる。2020/08/15
ナハナハ
0
大河ドラマの時代が気になったので鎌倉時代初期までの部分を読んだ。律令制が崩れていく様子には人の欲には建前は勝てないんだな、と感じた。でも律令が撤回されないで解釈論で運用されるのは現代の憲法にも通じるようで面白かった。律令制の問題点を請負制で対処する様子は改革よりも現場に丸投げする現代の組織のようだ。頼朝と後白河院の交渉は勝者と敗者という一面的な見方でなく相互が抱える欠点を補完し合うようで興味深かった。2022/11/11