内容説明
軍の命令か、医の倫理の逸脱か―。終戦直前の一九四五年春、名門大学医学部で行なわれたおぞましい「実験手術」により、米軍捕虜八人が殺された。当時、医学部第一外科の助教授であった鳥巣太郎は、この生体実験手術に抵抗し、四回あった手術のうち参加したのは最初の二回(正確には一回半)であった。しかし、戦後に行なわれた「横浜裁判」で、首謀者の一人として死刑判決を受けた。鳥巣は苦悩の末、死を受容する心境に達したが、鳥巣の妻・蕗子は様々な妨害をはねのけ、再審査を請求し、減刑を勝ち取った。本書は、鳥巣の姪である著者が、膨大な戦犯裁判記録のほか、知られざる再審査資料、親族の証言などを基に、語り得なかったその真実を明らかにするものである。
目次
第1章 生体実験(九大医学部第一外科;「捕虜は適当に処置せよ」;これは実験手術だ)
第2章 告発(敗戦;告発;逮捕;西部軍と医学部の共同行為としての生体実験)
第3章 B級戦犯裁判「九大生体解剖事件」(巣鴨プリズン;救援活動;裁判開始;スケープゴート;被告人証言;死刑判決)
第4章 再審査(再審査の闘い;死と向き合って;対決;減刑)
終章 伯父と私
著者等紹介
熊野以素[クマノイソ]
1944年生まれ。1969年、大阪市立大学法学部法学科卒業。大阪府立高校社会科教諭を勤めたのち、2004年、大阪市立大学大学院修士課程修了。専門は社会保障法学、とくに介護保険制度。社会保障法学会会員。「九条の会・豊中いちばん星」呼びかけ人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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