内容説明
カリブ海フランス領マルティニック出身の作家エドゥアール・グリッサン(一九二八‐二〇一一)。「詩学」という独自の表現手法を用い、西洋的歴史観に抗し、奴隷制と植民地支配により収奪されてきた島・民の視点から歴史と世界を編み直し続けた。根源的な思索の末にたどり着いた“全‐世界”という思想は、混迷深まる現代に何を問うのか。
目次
第1章 開かれた船の旅(ガニの夢;開かれた船 ほか)
第2章 “一”に抗する複数の土地(詩的意図;ネグリチュードの「叫び」 ほか)
第3章 歴史物語の森へ(フォークナー/グリッサン;逃亡奴隷と歴史 ほか)
第4章 消滅したアコマ、潜勢するリゾーム(『カリブ海序説』という試み;集団的衰弱 ほか)
第5章 カオスの海原へ(風景のリゾーム;漂流する語り ほか)
著者等紹介
中村隆之[ナカムラタカユキ]
1975年生まれ。東京外国語大学大学院博士後期課程修了。現在、大東文化大学外国語学部専任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スミス市松
12
「〈一〉の原理によって築かれたこの世界に対抗すること――〈西洋〉に対してまた別の〈一〉の原理を打ち立てて対抗する視点に甘んじることなく、〈一〉が〈多〉(多様なるもの)に複数化してゆく新しい世界のヴィジョン(あるいは複数化した〈多〉が更新する〈一〉)を語り続けること」――端的に言えば、これがカリブ海文学の元締め的存在エドゥアール・グリッサンが一貫してやってきたことである。本書は難解なグリッサン作品の読解を行うとともに、その独特の世界観の変遷、そして彼が最終的に辿り着いたヴィジョン〈全‐世界〉に迫っていく。2016/07/31
三柴ゆよし
6
読書会用にとりあえず手に取ってみたが、小著ながらなかなかに読ませる概説書。痒いところにまで手が届く親切設計で、これから読書会までのあいだ、おそらく何度か参照することになると思う。2019/07/06