内容説明
地霊は開発による痛みに耐え、過疎地では忘れ去られて孤絶感を深める。そして都市部の地霊は表層をコンクリートで固められて窒息状態にある。岐阜県高山市上宝町田頃家では家を建て替える時、屋敷地を一旦自然にもどした。「菜蕎麦三日」と称して蕪や蕎麦は三日で芽生える。芽が出れば屋敷地は自然にもどったことになる。ここには地霊に対する人の思いと礼がある。地霊や小さな民俗神を見つめ直すことは環境論の原点でもあり、現代人を蘇生させる道にもつながる。
目次
序章 地霊の相貌
1章 地霊の嘆き―開発と忘却
2章 地霊の称揚と鎮め
3章 地霊探索の試み
4章 信仰空間を歩く
5章 森と環境伝承
6章 地霊と死霊
終章 地霊と環境
著者等紹介
野本寛一[ノモトカンイチ]
1937年静岡県に生まれる。1959年國學院大學文学部卒業。1988年文学博士(筑波大学)。専攻は日本民俗学。現在、近畿大学名誉教授、柳田國男記念伊那民俗学研究所所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さんとのれ
4
人々の、自然に対する恐れや感謝から、自然発生的に生まれた地霊信仰。信仰を集めることにより力を得、神域として手付かずの自然を残すことにより人や動植物を守ってきたこの信仰も、開発や過疎化で打ち捨てられつつある。タイトルに「復権」とあるのは、まだあきらめないぞという著者の心意気でしょうか。2013/09/22
reur
4
ここ数年、死んだ人を神様として祀るという道筋が現代には喪われていると感じる事が多くなった。 畏れを持たなくなった人間は醜悪な本性を顕わにする事に躊躇いを持たない。その理由を振り返って世界、自然、過去などの“今”を創っているモノに心を向けてみようという本。「地に足が付いていない」というのはもしかしたらこんな側面も含む言葉なのかもと思った。2012/02/27