内容説明
二つの話を接合して成り立つ「かちかち山」は、戦前においてはうさぎが人間に代わって仇討ちを果たした話としてもてはやされました。戦後においてはそこを強調しなくなり、代わりに土の舟に乗ったたぬきの在り方に目がいくようになりました。その最後の画面の推移に昔話絵本のもたらす功罪を考えさせるものがあります。
目次
序章 日本の昔話絵本の考察にあたって(動物を描く日本の絵画の伝統;「かちかち山」絵本の考察にあたって)
第1章 江戸期(『むぢなの敵討』;『兎大手柄』)
第2章 明治期から昭和の終戦まで(『かちかち山』(日本昔噺)
『カチカチヤマ』(日本一ノ画噺)
『かちかち山』(講談社の絵本))
第3章 戦後期(『かちかちやま』(むかしむかし絵本12)
『かちかちやま』(日本のむかし話)
『かちかちやま』(おざわとしお再話))
著者等紹介
神立幸子[カンダツユキコ]
1936年、東京都に生まれる。白梅学園短期大学講師(非常勤)。日本児童文学学会会員
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感想・レビュー
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shirokuromarble
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予想以上におもしろかった。そういえば「かちかち山」ってタイトルの軽快さとは打って変わって相当グロいお話だったんだよね。江戸期では表向き仏教信仰のため肉食は禁じられているのに野生動物を食していたその矛盾点が表されているとか、戦時中はたぬきやうさぎは植民地に住む人たちを表している……、とかすごく興味深かった。お話としてのフォルムはできあがっていても、その時代によって表していることは違うのだね。今、描くなら格差社会とかを表現するかな?虐げられている民は動物以下だものね…、2012/10/18