内容説明
本書を『幕末民衆思想の研究』と題する。しかしながら、本書は、幕末の民衆思想の特質や独自の意義を取り出して論じたものではない。「もくじ」を参照してもらえば分かるように、本書は主として幕末国学と民衆宗教の二つの分野から構成されているが、それは、民衆思想をそれら二つのジャンルで捉えたという意味ではない。これらの絡みの中に民衆思想と当該期の宗教的意識や民俗的意識の動態との関連・構造を捉え、その問題性を浮かび上がらせるのが、本書の課題である。従って、本書の力点は民衆思想の独自性の強調には置かれていない。むしろ、民衆が思想的にどのように当該期の社会認識と関わったのか、あるいはそうした社会意識に構造化されていったのかという点が追求されているのである。この意味では、本書は民衆統合やイデオロギー支配について、民衆思想の側から考えようとしたものである。
目次
序章 復古神道と民衆宗教―幕末宗教史研究序説
第1章 幕末国学の転回と大国隆正の思想―国学における「政治」と「宗教」
第2章 復古神道と民族信仰―岡熊臣の「淫祀解除」批判
第3章 幕末国学の転回と鈴木雅之の思想―アメノミナカヌシの神秩序
第4章 民衆宗教における神信仰と信仰共同体―新しい共同社会の地平
第5章 民衆宗教と民俗信仰―明治初年の金光教
第6章 明治二十年代の民衆宗教―金光教にみる「民衆宗教」から「教派神道」への転回
補論1 国学と後期水戸学―後期水戸学派の思想史的考察に向けて
補論2 近代天皇制イデオロギーの思想過程―徳川思想及び平田篤胤像の転回を中心に
補論3 民衆宗教の宗教化・神道化過程―国家神道と民衆宗教
著者等紹介
桂島宣弘[カツラジマノブヒロ]
1953年東京都に生まれる。1984年立命館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。立命館大学文学部教授。文学博士
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