出版社内容情報
社会政策の近代性と人種政策の野蛮が同居するナチとは何か? ユダヤ・ジプシー・同性愛者への蛮行と民族純血の追及は,世界的人種政策か。冷静に事実を収集し,いまあらためて歴史的事実を検証し,事の本質に迫る
内容説明
本書の目的は、アウシュヴィッツの罪を旧ソ連の強制収容所やヒロシマとモラル面で同列におこうとする相対化の試みに反駁することにある。問題はまず、はたして近代化理論はナチの政権に適用できるかどうかということであって、この問題に関する解答こそがこの本の中核を形成する。
目次
1部 ナチズムの再検討(さまざまなナチズム論―一九四〇年代から現代まで;野蛮な理想郷―ドイツにおける人種イデオロギー;制度化された野蛮性―政策としての人種主義)
2部 民族の肉体の浄化(ユダヤ人に対する迫害;少数民族に対する迫害;共同体異分子への迫害)
3部 民族共同体の形成(第三帝国の若者たち;第三帝国の女たち;第三帝国の男たち)
著者等紹介
柴田敬二[シバタケイジ]
1928年神戸市に生まれる。1952年東京大学文学部西洋史学科卒業。訳書にE.コルプ「ワイマル共和国史 研究の現状」刀水書房1986。R.ベッケル「ナチ統治下の民衆」刀水書房1990。I.ケルショー「ヒトラー神話」刀水書房1993。W.ラカー「ファシズム 昨日・今日・明日」刀水書房1997
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感想・レビュー
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ぼけみあん@ARIA6人娘さんが好き
1
本書はナチスの近代化論を特に批判し、ナチスは一面では近代的な社会政策と人種社会が同居した特異なユートピア社会を目指したと分析する。その分析はかなり説得力があり、興味深い。しかし、ナチスの近代性の指摘に対する批判は分かるものの、その他のジェノサイドとホロコーストの関連性の指摘までリビジョニズム扱いするのは多少疑問に思った。それに近代化論と言っても、ナチスのそれは近代化に潜む暗部が現実の姿を現わしたものとの分析もあるし、批判が少し一面的に感じる。ナチスのユニークさばかり主張することの問題点もあるのではないか。2012/09/21