種子散布―助けあいの進化論〈2〉動物たちがつくる森

種子散布―助けあいの進化論〈2〉動物たちがつくる森

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  • サイズ A5判/ページ数 134p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784806711933
  • NDC分類 471.71
  • Cコード C0045

出版社内容情報

擬態をめぐる自然界のしくみのおもしろさと、動けない植物がみせるさまざまな種子散布戦略にスポットをあて、動物と植物の不思議な共生のしくみを、第一線で活躍する研究者たちが解説する。  ★★★バーダー評(2000年3月号)=国内の植物・動物研究者が、動物と果実の共進化について、さまざまな側面からアプローチ。植物から見た種子散布、動物から見た種子散布を知れば、自然界の不思議な関係にますます興味がわいてくる。★★★遺伝評(2000年5月号)=種子の分散に動物を利用する植物と種子や果実を餌として利用する動物との関係とそれを支える種子や果実の形質に関する自然史と生態学の研究論文のアンソロジー。随所に置かれたコラムには、果実にまつわる肩の凝らない話題が取り上げられており興味深い。★★★  ●●●「はじめに」より=「赤い鳥、小鳥、なぜなぜ赤い。赤い実を食べた」と、子どもの頃に歌った人も多いだろう。この赤い鳥は何の鳥だろう。ベニマシコだろうか、それともヒレンジャクだろうか。赤い実は何だろう。ナンテンだろうか、ナナカマドだろうか。赤い実はこれだけではない。ガマズミ、モチノキ、センリョウ、マンリョウ、サンゴジュ、イイギリ……、野山で見かける木の実の圧倒的多数は赤である。自然界に紫や黄色の実でなく赤い実が多いのはなぜだろう。その前に、自然界にはそもそもなぜ果実(フルーツ)があるのだろう。モモやリンゴなど甘くて大きい果実は、人間が長い歴史の中で改良に改良を加えてきたものである。だがヒトのいなかった時代にも、モモの祖先やリンゴの祖先は実をつけていた。それらは現在の栽培種に比べ、小さくて、甘みも少なかっただろうが、果実にはちがいなかった。ヒトのいない時代に、果実は誰のために存在していたのだろう。この問いに対する進化生物学者の答えは「それはサルや鳥たちのためである」というものである。といっても植物がサルや鳥のために一方的に果実をつけてやらねばならない理由はない。植物にとって大切なのは次世代をつくる種子であって、それをとりまく果肉の部分ではない。ではなぜ植物は果肉に多量のエネルギーを投資するのだろう。そう、植物はそれなりの見返りを期待しているのだ。一言で言えば、果実は、動けない植物が鳥やケモノに種子を運んでもらうための報酬として進化させた道具なのである。この本では植物と動物の14人の研究者が、動物と果実の共進化の問題について、さまざまな側面からアプローチした。ある程度、専門的な本ではあるが、卒業論文をひかえた学生や大学院生には研究のアイデアの宝庫だと思う。小・中・高校の理科の先生方には、この本を材料にして、教室で子どもたちに、動物と植物のびっくりするような不思議な共生の仕組みを語ってもらいたい。自然をより深く理解したいと願うすべてのナチュラリストの方々に読んでいただきたい。●●●  【主要目次】鳥とけものがつくる照葉樹林---動物による種子散布の生態/熱帯林における霊長類と果実の共進化/コラム『葉っぱを食べる鳥』/アジア熱帯林における森林の空洞化と霊長類の種子散布/テンが運ぶ温帯林の樹木種子/里山をつくる鳥---鳥によって支えられた農村樹林の種多様性/シカが育てるシバ草原/リスやカケスが森をつくる---樹木種子の貯食型散布と樹木の貯食への適応/アリによる種子散布/なぜアリ散布が進化したのか

目次

鳥とけものがつくる照葉樹林―動物による種子散布の生態
熱帯林における霊長類と果実の共進化
アジア熱帯林における森林の空洞化と霊長類の種子散布
テンが運ぶ温帯林の樹木種子
里山をつくる鳥―鳥によって支えられた農村樹林の種多様性
シカが育てるシバ草原
リスやカケスが森をつくる―樹木種子の貯食型散布と樹木の貯食への適応
アリによる種子散布
なぜアリ散布が進化したのか