内容説明
「近代化」の流れのなかで、人間の生や宗教の形態はいかに変化してきたのか。西欧、アジア諸国、日本の事例を通じて、モダニティと宗教の関係を徹底的に問う。宗教学の根本概念を鍛え直す意欲的論集。
目次
1 宗教と世俗の乖離(世俗化論争と教会―ウィルソン世俗化論を手がかりにして;「聖なるもの」の系譜学―デュルケーム学派からエリアーデへ)
2 ファシズムにいたる道(流浪する宗教性―ジンメル宗教論とドイツ近代の宗教状況;ルーマニアにおけるファシズム運動と知識人―レジオナール運動とフォークロア研究からみた一九三〇年代;神社の近代―祭祀と宗教のあいだをめぐって)
3 近代化、西洋化と宗教の遭遇(アイデンティティはモダニティの彼方に―北タイの霊媒カルトと美的再帰性;宣教の出会いと植民地主義―ベトナムにおけるイエズス会とパリ外国宣教会)
著者等紹介
竹沢尚一郎[タケザワショウイチロウ]
1951年生まれ。フランス社会科学高等研究院社会人類学科博士課程修了。国立民族学博物館教授。民族学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
10
「「聖」概念の内容が研究者によってこれほど異なるのは…聖が科学的概念として練り上げられる以前に、かれらが生きていた時代の社会的課題に応えるもことして要請されてきたためであろう。デュルケームが抱えていた課題は、近代社会がもたらしたアノミー…であり、それを超えて社会的統合を可能にするものとしての「聖」が要請されていた。第二次世界大戦直前の緊迫した情勢のなかで、シュルレアリスム運動にも関与していたカイヨワにとって、「聖」は世俗社会の凡庸さを乗り越えると同時に…行動主義の気運に呼応するものとして必要とされていた」2021/12/02