台湾新世代―脱中国化の行方

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  • サイズ B6判/ページ数 257p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784773628104
  • NDC分類 302.224
  • Cコード C0036

出版社内容情報

 日本と台湾の間では、年間百万人近い人々が互いに行き来する。しかし、72年以降は日台間に正式な外交関係がなく、90年代末まで大手新聞社の支局もなかったためか、台湾の「素顔」は意外に知られていない。東京・大阪から2、3時間で行け、沖縄の目と鼻の先にある台湾で今どんな変化が起こり、これからどこに向かおうとしているのか。在台3年半の間に政治家・民主活動家から街の床屋まで、さまざまな立場の人たちと接した新聞記者が活写する「台湾の現在」。

●はじめに

【第1章】民進党の四年間

1「台湾仔」陳水扁
 灼熱の記者会見
 台湾ドリーム
 迫力あふれる演説
 「青いリンゴと腐ったリンゴ」
 弁護士の現実主義

2 もがき続けた新政権
 闘士「オジサン」の死
 トップが相次ぎ離党
 与党議員が反政府デモ
 現実路線の選択
 台湾化傾向は深まる

3 ゆきづまる国民党
 「孫文の党」の転落
 危機意識が欠如
 ホープ馬英九は党を救えるか?
 李登輝の最後の闘い

4 検証 政権交代:二〇〇〇年総統選挙
 許信良の敗北
 李・宋が骨肉の争い
 お祭り選挙と中傷合戦
 李登輝に届かなかった分析


【第2章】民主化までの道のり

1 国民党独裁の傷跡
 監獄島から人権島へ
 掘り起こされた二・二八の記憶
 亡命活動家の愛唱歌
 〈民主〉を強調する元主席

2 政治にからむ「黒」と「金」
 台湾名物「乱闘議会」
 ヤクザが議員か議員がヤクザか
 票は買うもの?
 台湾版ロッキード事件

3 メディアの位置
 政治に従属してきた台湾メディア
 台湾独立か大陸統一か
 スキ本人
 霧社・タイヤルの誇り

2「親日」と「反日」のはざま
 消えてゆく日本語世代
 社会に定着した哈日族
 台湾人の歴史観を探る
 『台湾論』と『極楽台湾』

3 新たな隣人関係は築けるか
 一番乗りした日本の救援隊
 李登輝訪日の舞台裏
 陳水扁政権の対日政策を読みとる
 日本の対中配慮と日台交流

●あとがき

【付録】人名小事典

【まえがき】

 私が勤務する毎日新聞が台湾に支局を開設することになり、準備のため台北に常駐するようになったのは一九九九年一月末のことである。
 従来、大手メディアで台北に支局を置いていたのは産経新聞だけだった。産経新聞は中国大陸に支局がなかったが、一九九八年夏に中国当局から北京に「中国総局」を設置することを認められた。同時に、他の大手紙や通信社、NHKなどが九八年から九九年にかけ、次々と台北支局を開設することになったのである。
 毎日新聞台北支局は一九九九年三月、台湾行政院(内閣)新聞局から許可を受けて正式にオープンし、私は初代支局長に就任した。
 前年の四月に香港支局長に着任した私は、ほぼ毎月一回のペースで台湾に出張して取材を続けていた。だから、大方の台湾の事情は理解しているつもりでいた。
 ところが、いざ常駐してみると、台湾社会の変化の速さに圧倒された。政治家は離合集散を繰り返し、まさに「昨日の敵は今日の友、今日の敵は昨日の友」である。マスコミが大騒ぎして報道するニュースも一週間、いや早ければ二、三日で忘れられてしまう。街を見ても、商店やレストランの入れ替わりは驚くほど速い。
 とりわけ私いう思いが募っていた。
 もどかしさを感じる原因はもう一つあった。前述のような問題を差し引いたとしても、日本では大多数の台湾の人たちが何を考え、何を求めているか、あまり関心がないように見える点である。
 それは、日本では台湾を中国の裏返しとしてしか見ない傾向が強いからだろう。「反共」「嫌中」の立場を補完する目的で、台湾にかかわろうとするのである。
 だから、中国との違いを示す意味で台湾の民主化を称賛しても、その過程や内容には興味がない。李登輝の功績だけに焦点を当てる単純化された見方があふれ、その達成に費やされた多くの台湾の人々の犠牲や努力に目が行かないのである。まだ成熟したとはいえない民主化のさらなる発展に向け、苦闘する現在の台湾の姿も目に入らない。
 歴史問題でも、日本非難を繰り返す中国や韓国との対比において「親日」が強調され、その裏にある複雑な感情や、台湾にはほかにもさまざまな意見があることを理解しようとしない。
 二〇〇一年夏、日本の国会議員約四〇人が相次いで台湾にやってきたことがあった。議員たちはそろって陳水扁、李登輝の新旧総統との面会を求め、台湾側は日程調整などの対応に追われた。
 「日「台湾は台湾であり、共産党一党支配の中国とは違う」という台湾人意識が高まっている。
 だから、中国が求める「一国二制度」受け入れに賛成する住民はほとんどいない。中国が台湾に不当な圧力を加えたりした場合は、強い反発を示すのである。
 矛盾しているように見えるかもしれないが、これが多くの台湾人の素朴な感情である。二二五七万人(二〇〇三年一〇月現在)が住む台湾で、この舵取りをしていかなければならない陳水扁政権の大変さが分かっていただけるだろうか。
 台湾から帰国後、私の心から離れなかったのは、そんな台湾のありのままの姿を一人でも多くの日本の人たちに知ってもらいたいという思いだった。
 与野党を問わず、台湾の政治家がよく口にする言葉に「主流民意」というものがある。文字通り、台湾を代表する民意や世論を意味し、これを酌み取ることが政治家にとっていかに重要か、という文脈でよく使われる。
 しかし、実際には台湾の「主流民意」を伝えることは非常に難しい。極めて多様な意見が存在するのが台湾社会の特徴だからである。中国との統一・独立問題では、各種世論調査で八〇㌫以上の人が現状維持を望んでいるのに、メディアへのアピールに熱

国民党が半世紀の単独支配から下野して3年。民進党は台湾をどう変えたのか。3月の総統選を前に再び燃える台湾の政治家たちや、政治・文化面でのリーダー群像を活写

内容説明

二〇〇四年三月の総統選挙でTAIWANは再び変わるのか?世代交代は―政治でも文化でも確実に進んでいる。大変化の潮流の中で中国との両岸関係や愛日、親日、嫌日もきちんと見つめる必要がある。

目次

第1章 民進党の四年間(「台湾之子」陳水扁;もがき続けた新政権;ゆきづまる国民党;検証政権交代:二〇〇〇年総選挙)
第2章 民主化までの道のり(国民党独裁の傷跡;政治にからむ「黒」と「金」;メディアの位置)
第3章 対立と交流の「両岸関係」(駆け引きの舞台裏;経済一体化がもたらすもの;台湾の中の「大陸」)
第4章 日本と台湾の距離(日本統治の残像;「親日」と「反日」のはざま;新たな隣人関係は築けるか)

著者等紹介

近藤伸二[コンドウシンジ]
1956年、神戸市生まれ。79年神戸大学経済学部を卒業後、毎日新聞社入社。大阪社会部、大阪経済部副部長、外信部副部長などを経て、98年香港支局長。99年台北支局開設に伴い初代支局長に就任。2002年外信部副部長、2003年から大阪経済部編集委員。94年から1年間、香港中文大学に留学
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感想・レビュー

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Se_Quim

1
著者は元毎日新聞台北支局長。台湾総統が直接選挙で選ばれるようになったのは、1996年のこと。この本が出版された2004年時点でまだ10年もたっておらず、人々の選挙への熱狂ぶりと、そこに至るまでの歴史的な経緯、台湾の選挙になお残るカネとヤクザの問題、台湾人の日本観が解説されています。毎日の視点らしく(?)台湾の歴史における日本の負の部分にやや焦点を当てている向きもあり、それが肌で「日本に好意的な台湾」しか感じていなかった私には、逆に新鮮でした。ちょっと情緒的で読みにくいのですが、内容はなかなかでした。2020/11/08

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