歴史を楽しむこと、歴史に参加すること―黒羽清隆日本史入門講座

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  • サイズ B6判/ページ数 425p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750320243
  • NDC分類 210.5
  • Cコード C0021

出版社内容情報

研究、教育、運動の三位一体を具現した歴史学者・黒羽清隆。前作『日米開戦・破局への道』を補完する「木戸幸一日記」をもとに日本近代史を深く追求した「日本史料講読」講義録の他、反戦・平和の市民運動、教科書裁判等における集会、学習会の発言記録集。

はじめに
凡例
第一章 武士の流儀について、二題――浅野内匠頭と井伊直弼
1 刃傷、松之廊下
日本人と忠臣蔵/赤穂事件史料「多門伝八郎覚書」/時代劇の嘘/吉良上野介/乱心は仕らず候/多門伝八郎、幕閣の裁定を批判する/大目付と目付の論争/内匠頭、切腹/その後の幕府の裁き
2 井伊直弼と開国――部屋住みから彦根藩主へ
“花の生涯”/ヤマトタケルノミコト/埋木舎/禅と茶の湯/居合いの達人と美貌の師匠/一五万両の大盤振る舞い/そばと酒の値段/将軍継嗣をめぐる対立/皇国の流儀/癸丑以来
3 井伊直弼と開国――黒船来航
蒸気船とお茶/ゴールドラッシュ/水と石炭と生鮮食品を求めて/地球は丸い一つの世界/日米和親条約/ピヂン・イングリッシュ/服部之総の視点/反井伊という政治運動
4 井伊直弼と開国――大老就任
貪欲なオオカミと優しいオオカミ/日米修好通商条約と降伏文書の調印/秘書官の記録/大老井伊直弼の心境と論理/継嗣決定と一橋派の処分/長野主膳VS京都尊攘派/これが京都の宿だ/国家意識の芽生え
第二章 日記と文学から学ぶ日本近代史
1 日記・伝記から読む日本近代史
母の歴史を作る/伝記と日記/『原時下の民衆
塹壕の中の世界/千人針/出征する氏神/柳田民俗学が切り開いた民衆の心情/足らぬ足らぬは夫が足らぬ
第四章 教科書問題を考える
1 一九八二年、教科書検定ドキュメント
正誤訂正/「侵略」の不透明化/一五年戦争という歴史認識/民衆史に対する露骨な否定/国家権力としての検定/良い教科書を作るために
2 教科書裁判と大学
裁判の性格/ブリの照り焼きはハケで塗れ/聖徳太子は死にません/「原爆の図」/自由ということ
あとがき
黒羽清隆著書一覧
著者・編者略歴

はじめに
 二冊目の「黒羽清隆講義録」である。
 前作は、一九八二年度に静岡大学教育学部の二年生に向けて行われた「日本史料講読」という講義のうちの九回分を収め、『日米開戦・破局への道』として、二〇〇二年に明石書店から公刊することができた。今回の講義録は、前作のような大学でのある講義をまとめたものではない。それゆえ、前作と同様の期待をもって本書を手に取られた方は、いくぶんとまどわれることになるかもしれない。そこで、前回同様、はじめにこの講義録の一応のガイダンスを試みる。ただし、講義録を作ることにした経緯など、前作で紹介した部分との重複はなるべく避ける。
 今回の黒羽講義録は、前作のように一つの講義をまとめたものではないが、一二回の講義・講演のうち五回の講義は、静岡大学で一九八一年度に人文学部の一年生を対象に行われた、一般教養科目としての日本史の講義である。その他の講義、あるいは講演は、時々の集会や学習会で行われたもので、全て講義としての連続性はない。ただし、第二章2(一九八二年六月八日の「日本史料講読」の講義)は、前作の中に収められるべきものであった。つまり、この日の「日本史料講読」の講義テープを私が紛失として設定された講演である。日記・伝記史料の楽しみ方をアカデミックに紹介している。前作は『木戸幸一日記』を題材にした日記史料の全面的な研究の具体例であったから、この講演と前作とを並行して学ぶこともたいへん大きな楽しみではなかろうか。
 第三章は、いわゆる日中戦争・日米戦争を通して戦争に対する民衆の意識を探ったものである。これらの講義・講演は平和教育、あるいは反戦・平和を訴える市民運動の中での発言を集めた。また、第四章は、教科書問題を題材として、学問、とりわけ歴史学のあり方や、大学そのもののあり方を問い直したものである。
 教科書問題は、多岐にわたる問題の中で何が最も論争の火種になりやすいかといえば、その中心はやはり日本軍による侵略行為の記述であるから、第三章と第四章は決して無関係ではない。むしろ関係が深いというべきだろう。これらの講演とちょうど前後した時期に、中国をはじめとするアジア諸国から、猛烈な日本史教科書に対する批判が向けられた。第四章1などは、まさにその渦中における集会での記録である。
 前述のように前作が、歴史研究者、大学での歴史教育実践者としての黒羽先生の魅力を遺憾なく紹介していることに比べように参加し、どのような歴史を築くのかを問われている。
 黒羽先生の著作はすでに数多く出版されているが、今回ほど歴史への参加のモーメントを強く感じることができる出版物は、それほど多くはないように思われる。そうした一面も、黒羽先生の魅力を、読者の皆さんに新鮮に伝えることになるのではないかと期待している。

池ヶ谷真仁

目次

第1章 武士の流儀について、二題―浅野内匠頭と井伊直弼(刃傷、松之廊下;井伊直弼と開国―部屋住みから彦根藩主へ ほか)
第2章 日記と文学から学ぶ日本近代史(日記・伝記から読む日本近代史;戦時体制の構築―『木戸幸一日記』一九四〇年一〇月一日~六日 ほか)
第3章 戦争と民衆(美談の恐怖;今、なぜ七・七なのか―盧溝橋事件四八周年によせて ほか)
第4章 教科書問題を考える(一九八二年、教科書検定ドキュメント;教科書裁判と大学)

著者等紹介

黒羽清隆[クロハキヨタカ]
1934年2月25日東京都杉並区阿佐ヶ谷に生まれる。1952年、東京都立武蔵ヶ丘高等学校卒業。1952年、東京教育大学文学部史学科入学。1956年、東京教育大学文学部史学科卒業。1956年、東京都新宿区立東戸山中学校教諭。1961年、東京都新宿区立四谷第一中学校教諭。1964年、東京都立大学付属高等学校教諭。1969年、NHK通信高校講座日本史担当併任。1974年、東京学芸大学付属高等学校教諭。1975年、東京学芸大学教育学部非常勤講師併任。1975年、中央大学経済学部非常勤講師併任。1979年、静岡大学教育学部助教授。1981年、静岡大学教職員組合執行委員長。1981年、岡崎市史編纂委員。1981年、静岡大学教育学部教授。1981年、掛川市史編纂委員。1984年、静岡大学教育学部教務副委員長併任。1985年、静岡県史編纂委員会近代史専門委員併任。1987年6月19日逝去

池ヶ谷真仁[イケガヤマヒト]
1962年10月26日静岡県静岡市に生まれる。1981年、静岡県立静岡西高等学校卒業。1981年、静岡大学教育学部養護学校教員養成課程入学。1985年、静岡大学教育学部養護学校教員養成課程卒業。1985年、静岡大学大学院教育学研究科社会科教育専攻日本史専修入学。1988年、静岡大学大学院教育学研究科社会科教育専攻日本史専修修了。1988年、静岡市立西奈小学校講師。1989年、愛知県私学豊川高等学校常勤講師。1995年、愛知県私学豊川高等学校教諭
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感想・レビュー

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Miyaz

0
星42012/07/10

凡栽

0
講義録を通じて史料の読み方、俗説との差異などを明らかにしつつ、最後は教科書制作の裏側まで知ることが出来た。2011/04/30

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