エスニック・メディア研究―越境・多文化・アイデンティティ

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  • サイズ A5判/ページ数 482p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750318875
  • NDC分類 361.45
  • Cコード C0036

出版社内容情報

移民や労働力移動の歴史とともに発展した「エスニック・メディア」。20年以上にわたるフィールドワークによってその世界を研究しつづけてきた著者が、多様化するメディアのなかでも特異な魅力と影響力をもつエスニック・メディアの歴史と現在を明らかにする。



第1部 総論
第1章 概説 エスニック・メディアの諸側面
第2章 エスニック・メディアの研究

 筆者がエスニック・メディアの調査研究のためにフィールドに出かけるようになって、早くも20年余りが経過した。本書は、収められた論攷のほとんどがフィールドワークを基に書かれているが、その手法はさまざまである。社会学的な質問紙を携えた量的な受け手調査もあれば、ある特定の送り手に集中的に長時間のインタビューを試みた質的な調査もある。海外の多文化都市での調査もあれば、日本国内の、「外国人」集住地での調査もある。時間的にも初期の調査と近年の調査では20年の違いがある。
 このような、それぞれがインテンシブな調査に基づいている論攷をひとつの書物にまとめるのには理由がある。すべての章を貫く問題意識が終始一貫しているからだ。すなわち、当該のエスニック・メディアは「どのような人がどのような思いで始めたのか」「どのような人がどのような思いで読んでいるのか(視聴しているのか)」、そして「なにを、どう伝えているか」ということである。
 たとえば、筆者の海外のエスニック・メディア研究は、海外日系新聞の研究として始まった(田村、白水 1982)。1981年のことである。この、20人以上からなる学際的研究集団は北米在住の歴史家や社会学者も含エスニック集団のメディアにも目を配ってきた。カナダやハワイでは特に広い視野から日系メディアを把握しようと努めた。それが本書の第9章や第17、18章の基になっている。他のエスニック集団を対象に調査をしていても、その問題意識は、先の日系メディアの調査で抱いていたものと基本的には変わらない。それはたとえばカナダのウクライナ系のメディアの調査においても同様であった(第20章)。
 1980年代の半ば以降になると、日本国内に、それまでとは異なる民族的背景を持つ「外国人」の姿が目立つようになった。「バブル」景気に引き寄せられた労働者や、アジアなどからの留学生である。筆者は、それまでの海外エスニック・メディア研究の体験から、かれらもまた自前のメディアを持つだろうと予想した。調べてみると、まだゼロックスコピーによる複製だったり、孔版印刷のような作りだったりとプリミティブな段階ではあったが、やはりエスニック・メディアと呼ぶべきメディアが芽生え始めていた。さっそく筆者は国内でも本格的な調査研究を開始した。そして、ここでもこれまでの海外における調査研究と同様の問題意識を抱きながらフィールドに臨んだのである。
 在日エスニック・メ、各地の運動家たち(「受け手」)に回し読みされ、ウクライナ独立運動のオピニオン紙としての役割を果たしたという。とりあえずスケルトンを示すとこのようになるが、実際は、時代状況や送り手の経歴、価値観がさまざまに絡まり合い、壮大な物語となることは言うまでもない。
 外国といえばカナダだろうがメキシコだろうがすべて「アメリカ」へ行くと思っていた時代の移民から、その子や孫の世代、そして、移動する前から新天地のイメージがある程度あり、情報手段も多様に存在するという現代の越境移動者まで、本書はさまざまな時代のさまざまな立場の人びとが利用するメディアを扱っている。エスニック・メディアには、徒手空拳で異文化のなかに漕ぎ出した人びとの願いや生き様、民族的少数派として生まれた二世、三世の心情が詰まっている。
 本書に見るように、海外の日系メディアを含む各地のエスニック・メディアは、越境移動した居住社会のなかで、徐々にではあるが一定の地歩を占め、その社会の多文化化に寄与している。そして、真の意味での「共生」を目指して地道な努力を重ねているメディアも少なくない。
 かれらのエネルギーに突き動かされて調査研究を続けてきたが、ここで

目次

第1部 総論(概説 エスニック・メディアの諸側面;エスニック・メディアの研究―日本における研究の系譜)
第2部 在日エスニック・メディアの諸相(在日エスニック・メディアの諸相;ニューカマー中国人向けメディア―メディアと生活;ニューカマー中国人向けメディアの事例―『留学生新聞』の研究 ほか)
第3部 海外エスニック・メディアの諸相(ハワイのエスニック・メディア概観;戦前ハワイ日系プレスの黎明期;戦前ハワイ日系プレスの成長期・最盛期(上)その背景、社会構造 ほか)
グローバリゼーションとエスニック・メディア―メディア、越境移動者、アイデンティティ

著者等紹介

白水繁彦[シラミズシゲヒコ]
武蔵大学社会学部メディア社会学科教授、武蔵大学大学院社会学専攻教授。メディア論、コミュニティ文化論、異文化間普及論。1948年2月佐賀市生まれ。成城大学文芸学部でマスコミュニケーション論、大学院にて社会心理学、民族学を学ぶ。成城大学助手、高千穂大学教授を経て、1990年より武蔵大学教授。2003年より社会学部長。この間、東京大学客員教授(社会情報研究所)、CNNデイブレイクキャスターなどを兼務する
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