出版社内容情報
多くの若者がアイデンティティの喪失を訴えるなど,自我のあり方は従来のイメージである孤立的に形成される自我では捉えきれなくなってきている。本書は,自我は他者との関わり合いにおいて社会的に形成・展開していくとの立場から,人間の自我形成の過程を具体的な研究結果と自我形成の理論をもとに考察している。たとえば,C・H・クーリーによる「鏡に映った自我」では,他人がどのように認識・評価しているかを想像し,それに対して自分がもつ感情から自我は成り立つとしている。現代人の自我変容の様相が理解できる。
1.「自我の社会学」とは
2.鏡に映った自我
3.自我の社会性
4.親密な他者・疎遠な他者
5.一般化された他者
6.ホモ・ソシオロジクス
7.役割コンフリクト
8.ラベルされる自我
9.自己表現
10.外見による表現
11.印象操作
12.役割距離
13.役割形成
14.自我のコンストラクション
15.「自我の社会学」の課題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tenso_h(堀川てんそ)
5
「自我心理学」というと精神分析の一学派(アンナ・フロイト?)を指すことがあるようです。この『自我の社会学』が面白いのは、自我の成り立ちに関する部分。ミードの社会的自我などが紹介されています。一人暗闇の中でも自覚できる自分の存在や意識を怖いと思うことないですか?そのような自我が、社会との接点で形成されるとする説が私は好きです。他者の存在がなければ、少なくとも今感じる確固とした自意識のようなものも生まれなかっただろう。そう考えると心安らかになれる。自意識だけが、確固たるものでないのだと。2015/01/05
けーけんち
0
自我形成に他者の関与が必要なことは疑いようもないことがわかった。しかし、主体的であるはずの自我が、社会という関係に依存してばかりいるというのもおかしな話である。だからこそ、主体性というものがどういった概念であるかを入念に規定する必要があるのではないだろうか。2011/10/30