内容説明
僕は偶然の産物であり、イデオロギーの赤ん坊、歴史の孤児だ。ヒトラーとスターリンが共謀して僕を家なしにした―柴田元幸が贈る、ピュリツァー賞詩人の代表作。
目次
私の母はくねくねのぼる
スカリゲルはクレソンを目にして
私はジプシーに
そこは骨董の磁器を専門に
熱いスチームアイロンで彼女は
わが家はひどく貧しかった
私はナポレオン軍の最後の兵士
「わしとフロイト博士の話はみんな知っておる」
そいつは世界の終末の獣の
空中浮揚の全盛期で〔ほか〕
著者等紹介
シミック,チャールズ[シミック,チャールズ][Simic,Charles]
1938年、ユーゴスラビアのベオグラード生まれ。15歳のときにアメリカに移住。現在ニュー・ハンプシャー大学教授。これまで60冊以上の詩集・エッセイ集および英訳書があり、全米芸術文学アカデミー賞、全米詩協会賞、P.E.N.翻訳賞、エドガー・アラン・ポー賞など多数の受賞歴がある。また、1990年には『世界は終わらない』でピュリッツァー賞を受賞した
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年、東京生まれ。東大助教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
89
1990年にピュリツァー賞を受賞した詩集。柴田元幸氏による翻訳が素晴らしくて、読みやすかった。突拍子もないシュールさとユーモアと寂寥感が絶妙に混ぜ合わされて、読んでいると吹き出しくなるような、泣きたくなるような不思議な気持ちになった。作者はブルースに影響を受けたそうで、その点はよく理解できる。にっちもさっちもいかない生活の中で、声を張り上げて歌わずにはいられないブルースシンガーの精神をこの詩人も受け継いでいる。崖っぷちに立って、それでも生きるんだという気概が、「世界は終わらない」という題に込められている。2017/11/19
RF1
2
なんだこりゃー(笑)と冷やかし半分に読んでいたのに、気づけばのめり込んでしまった。突飛な言葉通りの絵を思い浮かべるとシュールなはずが、それはそれでありかというような気持ちにさえなる2013/04/06
まろすけ
0
まえがきが示唆に富む。「僕は偶然に向かって、僕自身という名のこの牢獄からの出口を示してくれるよう祈るのだ」「(散文詩は)叙情詩と物語という〜両立し得ない戦略から生まれた怪物」「その安酒場で、我々は己の宿命の重みをひしひしと感じ、我々の存在の奥にある無を味わう。我々は惨めであると同時に幸福であり、何もかもに唾を吐きかける。我々はしくしく泣きたいし、どんちゃん騒ぎをやりたい。なぜならブルースは、世界よりも古い悲しみを語っているのであり、それを癒すものなどありはしないのだから」もちろん詩も良い。コメント欄へ➡︎2017/03/13
belier
0
ブローティガンの藤本和子訳を思い出した。庶民的でシュールでユーモラスなのはブローティガンと共通だけど、この詩人は長生きしている。詩にも俗世間でやっていける生命力が感じられた。「無知が至福のところでは・・・」なんて谷川俊太郎なみの肯定感にあふれた詩だ。翻訳者が望むとおり、この散文詩集は翻訳でもその香りがたぶん保たれていると思う。リズム感あふれる日本語に翻訳してくれた柴田元幸さん。さすがメイスン&ディクスンを最後まで読ませてくれた翻訳者の実力だった。2013/03/31
おかもと
0
これは買おうかなとか他のも読もかなと思うくらいに面白かった。ユーモアがある。やっぱユーモアって大事やなと思う。2022/06/26