内容説明
今なお最も尖鋭なメタフィクションであり続け、近代世界のモデルとして聳立する小説『ドン・キホーテ』。手垢にまみれたドン・キホーテ像を複眼的に見つめ直し、セルバンテスのテクストに則して、本来の豊饒さと面白さを救い出す。ドン・キホーテ神話の解体へ。
目次
第1章 〈意識〉の仮面―セルバンテスの文学を被うもの
第2章 周縁の人、セルバンテス
第3章 ドン・キホーテの創造―反省からアイロニーへ
第4章『ドン・キホーテ』のパースペクティヴ
第5章 「知りつつ…」の構造
第6章 『ドン・キホーテ』におけるアイロニー/ユーモアの機能
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハチアカデミー
12
なぜドン・キホーテが近代文学の始まりと言われるのか。その解として、曖昧さ、諧謔性(アイロニー)、現実の不確かさ、複雑に入り組んだメタフィクション性などをあげ、作家の生涯と、作品に込められた意図・思惑を探る。セルバンデスの覚めた現実認識(何が現実なのかはそれを見る視点によって如何様にも変わる)が、荒唐無稽な作品を生みだした。正気と狂気の狭間で揺れるキホーテ、物語の進行に伴い主の狂気に染まっていくサンチョ、そして、その狂気を嘲笑しつつ、からかうという形でコミットしていく登場人物たち。そして読者もまた…2013/07/27