内容説明
十数年前、喫茶店の片隅で、女に振られて盛大に涙を流していた美しい男。大学時代から勇介だけを密かに見つめ続けていたフリー編集者の郁子は、31歳の引越しを機に最後のチャンスに賭けた―。十年間ひとりの男を思い続け、ひとりで在ることを選びとる郁子を通して、人間の弱さと純粋さ、自由である意味を描く傑作恋愛小説。
著者等紹介
藤堂志津子[トウドウシズコ]
北海道・札幌市生まれ。藤女子短期大学国文科卒業。学生時代より詩や小説を書き、広告代理店勤務を経て作家活動に入る。デビュー作「マドンナのごとく」で、昭和62年、第21回北海道新聞文学賞を受賞、同時に直木賞候補となる。平成元年「熟れてゆく夏」で、第100回直木賞受賞。以降、従来にない自由な視点から現代女性の心理をとらえた精緻な恋愛小説を書きつづけている。主な小説に「きららの指輪たち」「恋人よ」「せつない時間」「夫の彼女」「ソング・オブ・サンデー」(第8回島清恋愛文学賞受賞)「アカシア香る」「心のこり」「人形を捨てる」「秋の猫」(第16回柴田錬三郎賞受賞)、等がある
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感想・レビュー
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S.Mori
14
一人の男性を一途に10年間思い続ける女性郁子が主人公の物語です。こう書くと純愛物語のように思えますが、そうではありません。郁子は勇介を思うあまり他の男性とは刹那的な関係しか持つことができず、すさんだ生活を送っています。そんな彼女にジゴロと称する青年圭哉が現れて、郁子の気持ちは彼の方へ一気に傾斜します。第一作目でこれほど完成度の高い作品を書きあげた作者は、恋愛小説の名手と言われるだけのことはあります。読んでいて切なく胸が痛くなるような場面ばかりでした。愛と性の相剋について考えさせます。2019/11/23
チェス
5
分かるような、、分からないような、、、 図書館本。2019/03/25
かおり
5
10年も想っていたのに、変わるんだぁ····、と少し驚き。何で自分から10年も何も言わずにいられるのか、と驚き。全てはタイミング?協子にはものすごく共感!!2018/09/01
そのぼん
4
恋愛ものてした。…が、主人公にイマイチ共感出来なかったせいか、作品の世界に入り込めないまま読み終わりました。残念。2012/03/14
久美子
2
藤堂志津子さんが好きだから手にした1冊。予想以上に面白く、強く共感した。性と愛はかならずしもイコールでつながらず、愛のない関係は隙間をうめるようでいてより荒んだ気持ちにさせたりもする。そして、何年も想い続けようとも想いも人も時として変化しているもので。切なくありながら一つ前に進めたことに嬉しく思った。。2014/07/06