内容説明
ルネサンスといえば、優美な絵画や華麗な貴族の生活などが思い浮かぶが、都市や農村の大多数を占める、それとは無縁の無名の人びとは、毎日を必死で生きていたのである。それゆえ厳しい生活環境のなかで、知恵と才覚を武器に生存競争を勝ち抜きながら、自らの欲求に忠実にふるまうこともしばしばであった。本書は、輝かしいルネサンスの陰にかくれた庶民たちの日常を、残されている史料をもとにいきいきと再現する。
目次
第1章 広場と路地
第2章 衣食をめぐる葛藤
第3章 田園生活は麗しい?
第4章 子作りと子育て
第5章 犯罪と刑罰
第6章 売春とホモセクシャリティ
著者等紹介
高橋友子[タカハシトモコ]
1957年(昭和32年)、京都市生まれ。立命館大学文学部卒業。同大学大学院博士課程後期満期退学。イタリア政府給費留学生としてボローニャ大学留学後、立命館大学より博士号(文学)取得。現在、神戸女学院大学文学部総合文化学科助教授。著書に『捨児たちのルネッサンス』(名古屋大学出版会、第23回マルコ・ポーロ賞)など
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感想・レビュー
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Christena
8
サケッティの『三百話』や、ボッカッティの『デカメロン』から、当時のフィレンツェ庶民の様子が分かる話を引用し、衣食住、法律、組合、結婚などについて解説した本。タイムスリップした気分で、歴史の表舞台には登場しない、当時の庶民の暮らしを想像してみるのも楽しい。2014/09/06
人生ゴルディアス
4
サッケッティという人の残した当時の小話みたいなのを枕に、ルネサンス時代のフィレンツェの中下層民の実態を語る。ページ数もっとあったらよかったけど、資料的にあんまり語れることもないのかもしれない。現代の写真がちょくちょく差し挟まれていて良かったです。2022/11/22
cipher
2
義理に流されることもなく、法律やら人同士の交流において融通がきかない点に良くも悪くもキリスト教の影響を強く感じました。何かと制限がおおい日々の暮らしで、自身の立場をキチンと確立しようとする庶民のたくましさが感じられるエピソードが実例とともに解説されていて、世界史についてはとにかく疎い私でも楽しくじっくり読むことができました。2013/04/25
m.murasaki
2
広く浅く、要所要所でちょっとした小話が挟まるので気楽に楽しく読めました。2010/11/16
mob
1
現代人が想像する中世の大変さが五割増くらいで詰まっているのがこのルネサンス期。(実際の中世はもっと無秩序でひどい) ルネサンスといえばヒューマニズム、みたいな一方的感覚で、これくらいの時代設定の物語に現代価値観を持ち込むのはやめてほしいと思っている身からすると、この手の昔の社会や人間の営みが見える本は読んでいて本当に心が落ち着く。2020/10/19