内容説明
昭和十一年十月、パビナール中毒で入院中、太宰は聖書に耽溺した。「HUMAN LOST」「斜陽」「桜桃」など主要作品の鍵となる聖句の数々を取り出し、鮮やかに解析しながら、太宰にとっての神とは、罪障とは何かを問う。太宰文学にちりばめられた聖書の言葉を鍵に、生き急いだ生涯に新たな光をあてる画期的な書。
目次
聖書への接近
なんぢら断食するとき、かの偽善者のごとく悲しき面容をすな
空飛ぶ鳥を見よ、播かず、刈らず、倉に収めず
「駈込み訴へ」
パウロの書簡
己れを愛するがごとく、汝の隣人を愛せ
赦さるる事の少き者は、その愛する事もまた少し
身を殺して霊魂をころし得ぬ者どもを懼るな、身と霊魂とをゲヘナにて滅し得る者をおそれよ
われ、山にむかひて、目を挙ぐ