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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
309
DVDでは蜷川演出の舞台と、ヴェルディのオペラ版を2セット持っているが、戯曲を読むのは初めて。シェークスピアの数ある劇の中でも最も好きな作品。劇は、3人の魔女たちの予言で幕を開け、第4幕でも魔女がバーナムの森の予言をマクベスに告げるなど、全体には北欧・ゲルマン神話的な構想が外形にある。そして、その内部にマクベスの心理劇が描かれるといった構造を持っている。もっとも、心理劇とはいうものの、その葛藤はそれほど複雑なものではなく、むしろ単純だと言ってもよい。逆には、それ故にこそ演出の妙味が発揮できそうだ。2012/12/15
紅はこべ
258
マクベス夫人はシェイクスピアヒロインの中でも特に好きな1人。「私は子供に乳を飲ませたことがある、自分の乳を吸われるいとおしさは知っていますーでも、その気になれば、笑みかけてくるその子の柔らかい歯ぐきから乳首を引ったくり、脳みそを抉りだしても見せましょう、さっきのあなたのように、一旦こうと誓ったからには」何てかっこいい。何て強さ。それだけに後半正気を失うのが残念でならない。2017/06/08
ehirano1
222
四大悲劇の一角。かの有名な「綺麗は穢い、穢いは綺麗」の名言は数百年を生き残る。実は十年何年ぶりの再読ですが、改めて圧巻の作品。欲望という名の「野心」に負けた漢、マクベス。しかし、最期はその「野心」に勝ったとも云えるのではないかと思いました。欲望≒野心は秘めるモノであって、決して表に出してはいけない。しかし、やがては出て来るでしょうから、コントロールが超大変だと思います。2023/06/25
優希
140
シェイクスピアの4大悲劇の中でも特に密度の高さを感じずにはいられません。欲望と心の闇の深さをこれでもかというほど見せつけられます。権力を我が物にするには殺しをも厭わないマクベスが恐ろしい。王位を狙うがために野心を剥き出しにし、暗殺という手段で王位を奪い取った姿は欲望そのものの象徴だと思います。でもその心の奥底は不安と不信にまみれていたがために、血濡れた罪を重ねていくのが悲しみにすら見えました。「権力」の毒に溺れた男の狂いの報いという最期は「持たざる者」であるが故の悲劇と言えるでしょう。2016/07/23
かみぶくろ
131
こんなに面白かったか。エンターテイメントとしてまず極上。セリフの装飾と情熱が半端なく、端的に言ってすごくカッコいいと思った。ルネサンス期の主題である「自我の解放」を高らかに謳い上げていたシェイクスピアだが、時代を追い越しちゃって「自我解放後の近代人の空虚」をマクベスに先取りしちゃった、っていう福田恆存氏の解説が慧眼すぎてスゴイ。2017/10/15