新潮文庫<br> サビタの記憶・廃園

新潮文庫
サビタの記憶・廃園

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  • サイズ 文庫判/ページ数 333p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784101114095
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

療養のため、とある温泉地に滞在している少女は、そこで出会った1人の青年に惹かれるが…。感受性の強い少女の清新の時を瑞々しい筆致で切り取ったデビュー作「サビタの記憶」。単調な生活に倦んだ人妻は、若い従弟との危険な時間に足を踏み入れた…。3組のカップルが織りなす妖しい愛のロンド「廃園」。ベストセラー『挽歌』刊行の前後に発表された8編を収録した作品集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

びっぐすとん

15
図書館本。初読作家さん。何かで紹介されていて読んだのだが、うーん、なんせ昭和30年代の作品だからあらゆる点で古い。女心とか理解できる部分もあるし、皆川博子さんの古い作品を読んでいるときに感じるような、ここにあって、ここじゃない雰囲気、俗世のなかで聖域を求めるような作品集だった。戦後の復興途中のせいかどこか退廃的で、生きるか死ぬかの戦争経験者達のせいか、貞節よりも生きてる実感を求めているように感じた。2019/03/21

cithara

10
読書メーターで本書が見つからなかったのがショック。本当はあるのかもしれないが、膨大な件数が出てきたのでさっさとあきらめた。本書のコンテンツを全部含む文庫版の方に感想を書くことにする。原田康子さんは大好きな作家のひとりなのにまだ数作しか読んでいない。Wikipediaをチェックしたらとっくの昔に他界されていた... 言葉がありません。著者の作品は小川未明の童話を大人向けにした感じ。「小鳥に語るアッシジの聖フランシス」をyoutubeで聴いて世界観にひたる。日本人作家には珍しい、透明感溢れる哀しさがいい。2018/10/01

ソングライン

10
実体の確かでない少女の愛から、結婚に対する憂鬱、そして肉欲としての愛、大人になるに従い変化していく異性への想いが、女性の視点で細やかに描かれた短編集です。突然亡くなった妹の墓標を抱きしめ、慟哭する少年アレクセイの描写が印象に残る「馴鹿と死と」が好きです。2018/07/24

kaoru

10
少女と思想犯の青年の淡い交情を戦前の温泉地を舞台に描いた『サビタの記憶』、三組の男女の織りなす愛の顛末『廃園』、港町に住む男女の情熱を描きだす『海を射つとき』など佳品ぞろいの作品集。「『サビタの記憶』こそ私のデビュー作だと思っている」と著者があとがきに書いているとおり、この短編は後年の作品にみられる瑞々しい感受性に満ちている。ロマネスクな心理描写にはどこか三島由紀夫に通じるものを感じるが、時代に殉じたともいえる三島とは違い、著者は自らの原点である風土にとどまり、人生の最後まで自分の文学を紡ぎ続けた。2018/03/05

あ げ こ

9
眩しいほどに煌めく、瑞々しさ。淡く、疼くような痛み。新しく、鮮やかに息づいた感情、見知らぬそれを、綺麗に掴むことが出来ず、戸惑う姿の、そして、戸惑いに勝る喜びを、素直に、或いは、躊躇いがちに、享受する姿の、愛おしさ。なにかを埋めるよう、なにかに追い立てられるよう、促す、自らの成長。暗く、陰鬱な時代への予感。憧憬というものの、切実さ、美しさ、その行く末の、儚さ、残酷さ。止めようのない、変化の中で、自らの若さに驕ることなく、強く、しなやかに育って行く心。薄れる思いに縋らぬ、苦く、甘やかな余韻を、抱き締める。2015/02/19

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