内容説明
『意味の変容』で小説表現の構造を解き明かした著者が、「おくのほそ道」の成り立ちを大きく「起承転結」の四つの要素から眺め、把握し、旅の細部を跡付けてゆく。芭蕉ゆかりの庄内平野での実生活を踏まえて名篇「月山」や「われ逝くもののごとく」を創り出した小説家ならではの経験と思索が長い歳月のうちに発酵した独自の芭蕉作品論。
目次
起 旅立ち~遊行柳
承 白河の関~宮城野
転 壺の碑~象潟
結 越後路~大垣
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Cell 44
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「そもそも文学というものはひとつの生きた世界をつくり、魅了するといって読者をその生きた世界のものにしてしまうことです。そのためには、まず命題を以て読者を密蔽しなければなりません。密蔽するにはなんといっても構造をつくらなければなりません。しかも、その構造をつくるには物と物、事と事を対応させねばなりません。そればかりか、そうして組み立てられた構造も対応によって、奥へ奥へと組み立てられたものにならなければ、時間が流れたことにならず、生きた世界をなし得ないのです」(9〜10頁)この命題が芭蕉との対応で深化する本。2013/01/19