内容説明
16世紀から19世紀に至る四百年間は、フランス精神が絵画の上に最も美しく花開いた時代である。フォンテーヌブロー派、プッサン、ヴァトー、ダヴィッド、ドラクロワ、そして印象派の画像たちによる忘れ難い名作の数々―、その抑制された画面には明晰な合理性と繊細な感覚性が宿り、人間存在の全体像が凝縮している。フランス美術の精華を辿り、本書は、豊潤なユマニスムの世界へと読書を誘う。
目次
フォンテーヌブロー派の芸術(歴史的背景;イタリアからフランスへ;フォンテーヌブロー派の展開;新しい感受性の誕生)
16世紀フランスの絵画(偉大なる世紀;バロックの誘惑;フランス精神の勝利;古典主義の成立;絶対王政の芸術)
18世紀フランスの絵画(人間性の世紀;転換期の絵画;ルイ十五世時代の絵画;ロココから新古典主義へ)
19世紀フランスの絵画(華命の芸術;新古典主義;ロマン主義;写実主義;伝統の終焉;第二帝政時代の美術;印象派の理論と技法;印象派の展開;後期印象派;象徴派の技術;ナビ派とモンマルトルの画家たち)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風に吹かれて
15
ルネッサンスから19世紀末までのフランス絵画史。絵画史とて歴史や市民の意識から離れることはできない。そういった社会の動きを説明しながら絵画の変遷を解き明かす。時代が変わるにつれて、主に注文を受けて描かれた絵画が展覧会を通じて市民の目に触れるようになっていった。画家個人の想像力が芸術性であることが強く認識されるようになることが市民ひとりひとりの人権や感情が重んぜられるようになる世の変遷と密接であったことがよく理解できた。高階さんの丁寧な文章には、いつも好感が持てる。2018/08/20
奏市
11
「十六世紀のフォンテーヌブロー派から十九世紀末までのざっと四百年に近いフランス絵画の歴史を通史のかたちでまとめたもの」。線・形・構図か色彩かのどちらを重視するのかで振り子のように行ったり来たりし、印象派において革新的に表現法が変わったとの一連の流れを知れた。突然何々派、何々主義が現れるのではなく、歴史の流れの中である種必然のように生まれてきたのがわかった。読んでる期間に北九州のスコットランド国立美術館展でブーシェが見られて満足。幸福感に満ち溢れた甘い世界を堪能できた。(初めて生で見たベラスケスは凄かった)2022/12/04
bibliophage
9
ようやく読み終えた。自分の知識不足もあり若干読みにくかったが、勉強になった。通史なので、それぞれの画家についてはさらっとしているが、流れをなんとなく掴めたのでよかった。2017/02/06
Hepatica nobilis
3
フランス絵画史を通観するには好適。自分が知らない名前もかなり出ていて、いろいろな画家の評価も含めて勉強になりました。★★★2010/12/24
貴人
2
地理、文化、歴史的な文脈からのフランス絵画観から始まって、各時代について分析していく本。私としては好きなロココ期のシャルダンとヴァトーのくだり、印象派の発生過程の分析が興味深かった。最初はきつかったが、勢いに乗れれば読みがいがある一冊。2014/10/04