出版社内容情報
【内容紹介】
日本文学のうえで、光源氏ほど大ぶりで、ゆたかな、陰影に富んだ人間像は、ほかに見当たらない。幼い日の母への思慕、青年期の恋のはなやかさの反面、人間としての、人知れぬあやまち、悩み、挫折を通して自分をみがきあげ、やがて一門の主として成熟していく姿には、尽きない魅力がある。定評ある著者が、光源氏に焦点をあて、源氏物語を現代的に再編成した野心作であり、源氏物語の入門書としても好適である。
わたしの源氏物語――長くて複雑な源氏物語の内容を、大胆にカットしてみました。そして「光源氏の一生」という筋道に、源氏物語の内容を再編成してみました。それが本書です。あるいは、源氏物語の内容から、もっともよく書けている部分を、自由に抜き出して並べ変えてみた、ともいえるでしょう。こういう仕事は、それをする人によって、ずいぶん違った形にまとめられてくると思いますが、わたしとしては、まずこれだけの話は、ぜひ知っておいていただきたいと思った部分を、書きとめました。この本が縁となり、手引きとなって、現代訳によってなりとも、源氏物語の全体を読んでくだされば、たいへん結構です。――本書より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
41
「光源氏はプレイボーイ」という風な低俗な解説が一切無い良書です。『源氏物語』をしっかりと通読・熟読すれば、光源氏がいかに苦しまれたかということがわかるはずです。恋、相手を大事に想うから甘美でもあり又、苦しくもあるということをぼんやりと思いながらの読了です。2016/01/26
井月 奎(いづき けい)
38
『源氏物語』の物語中、光源氏の振る舞いのみを抽出した新書です。いや、登場人物の関係や時系列が分かりやすくて助かります。ますが、著者は光の君を『見事な人格の人』と書いていて、それが納得いかないのです。どこをどう読んでもマザコンエディプスコンプレックスロリコン自意識過剰承認欲求過剰なお人で、たちが悪いのがこのお人、この上なく美しいのです。その美しさが光り香るのです。なのでかかわる人が皆々光の君に引き寄せられるのです。帝でさえ。『源氏物語』は翻弄された女性の、各々の物語だと私は思うのです。2024/01/27
佐島楓
20
源氏物語のダイジェスト版。当時のこまごまとした知識も同時に得られるし、著者独自の見解も読め、参考になった。2013/07/20
ひよピパパ
14
『源氏物語』の中で描かれる光源氏の生涯について、その梗概を解説した書。物語の中の人物にすぎない光源氏がまるで実在したかのように、その人物像が生き生きと描かれる。本書によって『源氏物語』の大まかな筋を確認することができ有益。光源氏が、「女性から女性へ渡り歩いた浮薄な男」ではなく、一門の長としての誇りと自覚をもって生きた人物だということがよくわかった。2018/09/15
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10
ギリシア神話とかでも神様ってめっさエゴイスト多いよね。光源氏がやりたい放題やっててかつ、浮気されたら許さなかったとか、たしかに神話ならではの冷酷さを受ける。瀬戸内寂聴の源氏物語を読む、という本では葵の上は不幸な女だと書かれていたが、本書ではもっとも幸福な女性と書かれており、その辺りは、なるほど男女で解釈が変わりそうだ。2020/04/18