内容説明
「アビダルマ」とは、ブッダが説いたダルマ=法・真理を解釈し、仕上げられた壮大な思想大系を意味する。インド諸学派のアビダルマ教義の中で、5世紀ころ、仏教史上最大の思想家ヴァスヴァンドゥ(世親)が著した『アビダルマ・コーシャ』を取り上げて、仏教思想の哲学的側面を根源から捉え直す、画期的労作。
目次
第1部 無常の弁証(宇宙;人間;ダルマの体系;物;心 ほか)
第2部 インド思想とアビダルマ(服部正明;桜部建;上山春平)
第3部 仏教哲学の原型(宗教と哲学;アビダルマの課題;『倶舎論』の構成;有情の業;ダルマの体系 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
61
シリーズ二巻目はアビダルマ。「唯識三年倶舎八年」というフレーズがあるが、それが示すように極めて難解。アビダルマとは何かというと、副題とされている「存在の分析」が示すように仏陀の教説や宇宙、人間、煩悩というものを極めて精緻に分析したもの。その為大乗経典が持つようなダイナミズムは無いものの、どこか完成したガラス細工を思わせるような美しさが見られるなあ。とはいえやはり難解なので読み終えた今でも頭の中が取っ散らかっているかな。五位七十五法や刹那滅といった説一切有部を代表するものは何となく覚えたのだけど…。2023/08/30
takeapple
16
仏教の思想第2巻、アビダルマ。シャカの死後、シャカの説いた教えを体系化して、どう学ぶかを示したものがアビダルマという理解でいいのかな?仏教の大事な考え方の定義や方法、それらの分類が書いてあるけれど小難しい議論が細部にわたって続いていた様子が伺える。編者の上山春平は梅原猛よりはわかりやすい。次は中観ですか。2018/12/26
no.ma
10
アビダルマとはブッダの説いた真理(ダルマ)の研究を意味し、そのひとつの完成態というべきものが世親の『俱舎論』である。小乗仏教と大乗仏教の転換点であり、仏教の思想ではきわめて重要な役割を果たしている。アビダルマの立てた理論体系を中観が否定し、唯識が再構成する。本書は理解しやすいようにかなり嚙み砕いて説明してくれている。とはいえ、なかなか難解で、私は二度ほど通読したがまだまだ足りない。アビダルマの宇宙の形成は、何の存在もなく虚しい空間に、どこからともなく微風が吹くことから始まる。2021/01/24
まえぞう
9
第2巻は仏教思想でも最難解なアビタルマです。諸行無常を基礎として、物の捉え方を含む存在の分析が、因果の考えをベースに議論されます。内容は極めて詳細で、煩雑と言ってもよいくらいです。ゲーデルの不完全性定理をあつかった数学ガールを思い出します。2018/11/28
anchic
8
佐藤優氏が勧めている本だったので読んでみました。宗教の思想と聞くとすぐに毛嫌いする人が多いと思いますが、しっかり学んでみると心理・哲学の知識の延長線上に位置するものだと感じました。2013/06/04