出版社内容情報
廃止か保持か―日本降伏をめぐる英・米・オーストラリア・中国など連合国側のさまざまな天皇観の対立・相剋をはじめて実証的に明らかにし,戦後改革を伝統社会変容のドラマとして解明した画期的研究.
内容説明
廃止か保持か―日本降伏をめぐる英・米・オーストラリア・中国など連合国側のさまざまな天皇観の対立・相剋をはじめて実証的に明らかにし、戦後改革を伝統社会の変容のドラマとして解明した画期的研究。諸外国の「鏡」に映し出された天皇制のイメージは、同時に日本人のいかなる思考や集団行動様式を反映しているのか。
目次
第1章 アメリカ国務省における天皇観の対立
第2章 イギリス人にとっての天皇制
第3章 太平洋問題調査会の天皇論
第4章 「天孫民族の世界制覇」観とオーストラリア
第5章 中国人と日本の「覇道」主義
第6章 無条件降伏の「鍵」
第7章 占領政策と天皇制―「伝統主義的支配」変革のドラマ
著者等紹介
武田清子[タケダキヨコ]
1917年兵庫県生まれ。アメリカのオリヴェット大学卒業。コロンビア大学、ユニオン神学校にも学ぶ。文学博士。国際基督教大学名誉教授。思想史専攻
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感想・レビュー
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mittsko
10
敗戦時の天皇制の評価と存廃をめぐる多様な議論を、主に連合国側の史料からあぶり出す古典的名著! 英訳版の表題がよく示すように、本書の基本的視座は、近代日本の天皇制がつねに「二重イメージ」の中におかれ続け、法体系や国民感情にその様態が完全に露呈している、というもの これだけとれば定説の蒸し返しだが、本書の独自性は その二重性が実は戦勝国側にもそのまま反映していることを 史料上で確定してみせたこと さらに、思想史家として、普遍と特殊、西洋と非西洋との対立と総合、および新たな文明の可能性にまで筆はおよぶ2018/04/19
衛府蘭宮
5
近代日本には、二頭立ての馬車のように、絶対的・神秘的な天皇観と制限君主的・立憲的な天皇観が併存していたのは周知のこと。その相矛盾する天皇観は、「外国の鏡」に跳ね返り、占領期に日本国民に戻ってきて議論や意識・制度改革に繋がっていく。本書の大部分は、連合国の「鏡」に映じた天皇観である。神秘的・覇道的・天孫民族思想など民主主義とは原理的に相容れない天皇制を廃すべきという主張と、必ずしも相容れないものではなく、天皇制の行方は日本国民の選択に委ねるべきという主張とがそれである。2018/08/22
shin
1
1945年終戦前後の天皇の戦争責任、また新憲法制定の連合国側での議論を、史料を基に整理して論じている。 連合国が、天皇に対する日本人の精神性の自らとの異質さに触れて動揺しながらも、民主国家を日本に構築する目的のもと、真剣に検討をなされた過程が見える。 デリケートな話題ではあるが、憲法改正論議が焦点となる今、当時の史料を振り返ることは意義深い。憲法論議も、感情に身を任せた空中戦ではなく、このような丁寧な論を一読した上で、本書に比肩する論を持って意見を表明してほしいという願いを新たにする。2020/02/10
inu
0
日本国憲法制定の裏にあった連合国側の思惑といった感じで読みました2021/03/09