岩波文庫
三つの物語

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  • サイズ 文庫判/ページ数 215p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784003253854
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

出版社内容情報

フローベール唯一の短篇集で,「まごころ」「聖ジュリヤン伝」「ヘロヂアス」の3篇からなり,作者晩年の珠玉のごとき名篇である.「ボヴァリー夫人」につらなる写実主義的な鋭い人生観照を示す冷徹さと,「サランボー」などに流れるロマン主義的な華麗な夢想にあふれた情熱とがみごとにふれあい,フローベールの芸術はここに結晶する.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

松本直哉

26
Le bois s'épaissit, l'obscurité devint profonde... そっけないほど簡潔で雄勁な筆で描かれる聖ジュリアンの物語。彼の殺してきた無数の鳥や動物に取り囲まれ見つめられながら夜の森を歩く情景は読むたびに戦慄を覚える。父と母を殺すだろうという森の鹿の予言から逃れようとしても逃れられないことをなぜか読むものは予感してしまう。そしてそれが成就してしまったとき、彼は自殺しない。オイディプス王がそうしなかったように。自殺の方が楽だったのに。あえて生きのびて償いつづける勇気2017/11/05

em

16
なんとも旧漢字が似合う三つの小品。昔のカタカナ表記も、何だか可愛らしく見えて好きです。「まごころ」を読んで、『フローベールの鸚鵡』を読んでみたくなりました。「聖ジュリヤン傳」はどこまでオイディプス的展開になるのかとひやひや。「ヘロヂアス」は大好きなサロメ関連のため、ただただ夢中で、最後の注まで熟読。周辺人物のことを詳しく知らなかったので、注もなかなか面白かったのですが、文字が2ミリはいくらなんでも小さすぎ。2018/04/13

棕櫚木庵

16
読メで教えてもらった本.というか,以前,2番目の「聖ジュリアン伝」を別の本(鈴木信太郎訳)で読んで文庫本(と全集端本)を買い,そのままになっていたのを思い出した.一番印象深かったのは最初の「まごころ」.家族に恵まれず,それでも愛情を誰かに(最後はオウムに)注ぎ続け,一人死んでいった無学な老女.その信仰もおそらく正統からは程遠い.それでも,天国は彼女のものだと感じる.法然上人が,「ものもおぼえぬあさましきひとびと」が参るのを見て往生間違いなしと微笑んだという話(親鸞『末燈鈔』, 6)を思い出した. 2018/01/13

パオー

8
「ブヴァールとペキシェ」以来二作目のフローベール。なぜか遺作から降順に読んでます。「ブヴァール」はいろいろな要素が入っていたので気づかなかったのですが、本作でフローベールがどのような特徴を持った小説家なのかがよく分かりました。まさにフローベールのエッセンスが凝縮された一冊。心理描写を最小限に抑え、「目に見えるもの」の描写を積み重ねることで紡がれる三つの物語。素朴な女の不幸な人生が短い分量のなかで淡々と描かれた「まごころ」が特に印象に残りました。読みやすいのでさほど問題ではないのですが、旧漢字なのが玉に瑕。2012/11/19

きりぱい

7
三者三様の、それぞれの人間が持つ気質がいかなる運命を引き寄せるか。「まごころ」は冒頭で『純な心』だと気付き、他にも題名違いの出版はあるようだけど、純粋がゆえに可哀想に思える人生も、本人がよしとする精一杯さが見えて地味ながらじんとくる。「ヘロデアス」は預言者ヨカナン登場で、あ、その話か、と。ワイルドが怪奇のサロメなら、こちらはヘロデ王の苦悩。一番よかったのは「聖ジュリヤン伝」。予言におびえながら結局逃れられなかったジュリヤンの辿る運命が早い展開で読ませる。2010/03/26

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