岩波文庫
三人の女・黒つぐみ

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  • サイズ 文庫判/ページ数 242p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003245026
  • NDC分類 943
  • Cコード C0197

出版社内容情報

愛する少女トンカの不貞と妊娠.疑いようもない事実を前に困惑しながらも,恋人の青年はなお不貞を否認する彼女の言葉を信じようとする.限りなく哀切な愛の物語「トンカ」をはじめ,「グリージャ」「ポルトガルの女」の三篇からなる短篇集『三人の女』に,日常世界への神秘の訪れを語った短篇「黒つぐみ」を併収.

内容説明

愛するトンカの不貞と妊娠。疑いようもない事実を前に困惑しながらも、恋人の青年はなお不貞を否認するトンカの言葉を信じようとする。限りなく哀切な愛の物語「トンカ」をはじめ、「グリージャ」「ポルトガルの女」の3篇からなる短篇集『三人の女』に、日常世界への神秘の訪れを語った短篇「黒つぐみ」を併収。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

76
抽象的で捉え方が自由だった『愛の完成』でのテーマを具体例として挙げたような「三人の女」。特に『トンカ』は不貞の末に子を成すもトンカへ無私の愛情を掛けるも報われない男の話にも見える。しかし、始終、男の視点でしか語られないため、その愛は相手への強烈な執着にしか見えない時もあり、戸惑う事もありました。「ポルトガルの女」の輪廻転生的結びや「グリーシャ」の無常観も中々。そして「黒つぐみ」の喪失に寄り添う優しさのある幻想性に胸を締め付けられます。2017/08/05

syaori

59
自分の見る”現実”とは何なのか。社会には規範があり道徳があり、人はそれに依って世界を見ている。それを失うと世界は「個々の無意味なものに解体してしまう」。作者が見るのはそんな「確固たる原則」を離れた世界で、「現世を逸脱」した寄る辺ない寂しさが詩的な言葉で紡がれます。『トンカ』で感動的に語られるそこを越えた境地は、私にはまだ「生まれかけの神話」なのですが、自分がムージルに惹かれるのは、社会を形作る宗教や価値観が多様化・複雑化した現代の孤独や荒涼を、それを越える予感と共に見せてくれるからではないかと思いました。2020/05/20

三柴ゆよし

20
『三人の女』は、これがもし観念的な文体で書かれていなければわりとぜんぶ身もふたもない話になりそうな作品。しかしどれも好みであった。「グリージャ」において、予兆されていた再生はイニシエーションの途絶によってついに果たされず、「ポルトガルの女」「トンカ」にしても、この解消のあり方はちとひどいのではないかとおもったが、机や椅子、壁紙といったどこにでもあるものが、その〈モノ性〉をいわばずる剥けにされたかたちで描かれる場面がしばしばあり、こんなこともできるのかとおどろいた。やはりなんといっても文体の作家なのだろう。2017/10/02

ぞしま

17
『愛の完成〜』の時にも思ったのだけど、ムージル短編に於ける魅力の一つはその異物感なのだと思う。異形と言っても良い。それらを生々しくせしめるのは、時に極めて微細に描かれながらも連関性を持ち得ず行き場なく萎んでいく断片、あるいは妙に切実に極限まで彫琢されたようや描写の数々が担保しているのではないか。現実と非現実/超現実が行き来する中戸惑いに似た幻惑性を覚えるが、そこのみにその魅力を見出すにはこの作品群はあまりに多層なのだと思う。読んだ瞬間に忘れている。謎、謎、謎……それでよいのではないかと思う2017/08/14

zumi

14
ムージルが描く愛ってのは、どうしてこんなに奇妙なんでしょうか。トーマス・ベルンハルト『消去』でしばしば登場した「ポルトガルの女」が収録されてます。2014/08/16

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