岩波文庫
奉教人の死・煙草と悪魔 他十一篇

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  • サイズ 文庫判/ページ数 190p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003107058
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

幼児を救うため火中にとび込む殉教者の死と奇蹟を美しく描き出した表題作.煙草の日本伝来を考証的な説話スタイルで軽妙に語る「煙草と悪魔」.伝説や説話をとりあげて独特の奇警な解釈をあたえ,巧智極まる文章によって再現してみせる芥川の才気に充ちた作品から,いわゆるキリシタン物一三 篇を選び収めた. (解説 中村真一郎)

内容説明

幼児を救うために火中にとび込む若い殉教者の死と奇蹟を美しく綴った表題作。煙草の日本伝来を考証的な説話スタイルで軽妙に語る「煙草と悪魔」。伝説や説話をとりあげて独特な奇警な解釈を与え、巧智極まる文章によって再現してみせる芥川(1892‐1927)の才気に充ちた作品から、いわゆる切支丹物13篇を選び収めた。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Willie the Wildcat

63
伝説や説話を通して、日欧の思想、特に宗教観を様々な文体で対比。伝承、奇跡、そして基督教という括りと、日本の宗教観に勝手に分類してみた。機知と皮肉の混在する『煙草と悪魔』や『るしへる』。対する後者の『報恩記』と『おぎん』。万国共通の心底に宿る共通項・・・、愛情と信義。過程の問いかけが『おしの』という感。シニカルなのが『神神の微笑』。良くも悪くも日本人の本質の一端を描写。否定できないなぁ。(汗)2017/11/02

13
キリシタン物13編。実に良かった。「おしの」は斬新奇抜でおもしろかった。慣れない文体に時間がかかったけど、理解すると妙に何回も読みたくなり数度読み返した。まさしく、読学である。今更ながら芥川最高!2014/08/26

柊よつか

10
切支丹物を集めた一冊。面白いなと思ったのは、芥川が描いたのは西洋文化のキリスト教ではなく、キリスト教を香油の如く滴らせた日本文化であること。布に染みを作るような話もあれば、水に油が浮いたような話もある。中でも好きなのは、水に垂れた香油がじわじわ乳化されていくような「神神の微笑」。耳元で悪魔に惑わされる気分を味わえる「るしへる」も好き。文献を模した体で綴られた〈いんへるの〉〈はらいそ〉〈ろおれんそ〉などの単語によって、独特の時代トリップが味わえる。2019/05/04

歩月るな

7
90年頃の芥川岩波文庫の一冊で探しても見つからなかった本。切支丹モノが納められた短編集。切支丹モノだからとか特に前知識も必要なく、単純に面白いお話が揃っていて楽しめる。中でも『報恩記』が傑出して儲けもの、構成が『藪の中』と同様な点は読めば解るので幾らでも比較されるだろうけれど敢えて優劣をつけるなら『報恩記』の方が緻密かつ巧妙で素晴らしい作品と言える。さて実の所、僕は『黒衣聖母』が目当てで、てっきりここに収録されていると思って読んだのだけれど、残念ながらこれには入っていなかったです。青空文庫で読めるけども。2015/11/18

ゆきなり

3
芥川のキリスト教に関する短編だけ若い頃から晩年の作まで集めた作品集。こういう一本テーマの通った編纂の本を出す岩波文庫が好きなんだ。これ一冊で芥川のキリスト教に対する想いの軌跡を追うことができるようになっている。さまざまな文体を使い分け技巧を凝らした創作に燃えていたらしい初期、次第に苦しく、キリストに対する想いにも屈折が見えてくる時期を経て、最後には半ば芥川の自己分析のような『西方の人』に至る(『西方の人』は未収録)。読み進めるにつれ、だんだんと背負う十字架の重くなる芥川の精神を感じて切ない一冊でもあった。2019/06/13

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