出版社内容情報
南無阿弥陀仏という6字の名号が意味するものを説き明かしつつ,浄土思想=他力道を民藝美学の基盤として捉え直した書.一遍上人を日本における浄土思想の到達点として歴史的に位置づけた点は注目される.(解説=今井雅晴)
内容説明
南無阿弥陀仏という六字の名号が意味するものを説き明かしつつ、浄土思想=他力道を民芸美学の基盤として把え直した書。なかでも、日本における浄土思想の系譜を法然―親鸞―一遍とたどり,一遍上人をその到達点として歴史的に位置づけた点は注目される。柳宗悦晩年の最高傑作であり、格好の仏教入門書である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
8
さきほどの岩波ワイド版に比べて、敷居が下がった感じがする。菩提心を起すとは、人間が最も人間らしい心を持つことである(77頁)。人間らしい心が失われている格差社会にあって、相手に対する思いやりがまず、回復される必要がある。同じことをしなければ気が済まないような、被害を受けるケースすらある。「地獄を否むということは、罪への自覚を持たない傲慢なまた愚鈍な見方に過ぎない」(132頁)。地獄との対峙。現世での行いが悪くて、懺悔や犠牲者に謝罪をしなければ、酷い目に遭うのもやむを得ないのではないか。因果応報。2013/05/03
kera1019
3
「難解な用語のために仏教は損失を招いている。この用語の問題は、仏教の運命に重大な関係を及ぼすであろう。」という著者の危惧より書かれた本書。南無阿弥陀仏と称名する事で民衆の生活に結びつけ、浄土門が仏教を民衆の仏教へと深めていった事がわかり易い言葉で書かれてあるのに、浄土門の思想の深部にまで届く筆致は千鈞の重みを持つ。浄土門に限らず仏教に興味があるなら必読の一冊です。2013/05/28