出版社内容情報
18世紀の大阪に商人たちが築いたアカデミー「懐徳堂」.近世日本の経済の中心地・大阪は,どのようなイデオロギーを形成したか.シカゴ学派を代表する歴史家が迫る,言説とイデオロギーの社会史.
内容説明
18世紀の大阪に商人たちによって創設されたアカデミー「懐徳堂」。江戸幕府の官許をえたこの学問所では、日本全国と知的ネットワークを結びながら学者や商人を中心とした学問的営為が開花したのだった。これまで、経済思想史あるいは地域史の視点からしか考察されていなかった「懐徳堂」を、18世紀日本における知的・思想的言説の重要なポストとして捉えた本書は、大阪の商人たちが「徳」という言説にこめた意味を明らかにする。思想史の新たな方法的視点によって照らしだされる言説とイデオロギーの社会史。
目次
哲学的環境
徳の探求―懐徳堂の創設
逸脱と秩序の間―第一原理としての歴史あるいは自然
学問所からの知的展望
夢の代りに―18世紀末の大坂における商人の認識論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
33
すごい、すごい、すごい。武士道でも農本主義でも職人でもない、商人の、ネットワークの哲学。日本にこんな知の伝統があっただなんて。◇懐徳堂という学校のことは、山片蟠桃にも惹かれたし、阪大や適塾の源流として知ってはいたけれど、その中身ははじめて。「知は相対的なもの」「だから次々と更新されてゆく」「誰もが担い手になりうる」・・貴族でも武家でもない、まったく普通の生まれの商人たちが、その身分のまま世の中を知り、考え、自ら世のなかに関わっていくために生涯学びつづけたネットワーク。ナジタの文も、楽しそうでドキドキする。2015/05/18
きさらぎ
2
1726年に「恒久的で合法的な、商人に対する公的学問所」となって以来、150年以上にわたって存続した「懐徳堂」を分析した書。蘭州、竹山など個性的な学主を戴きながらも、一貫して道徳哲学(徳の追究)であれ自然科学であれ、「知」の追究はあらゆる人間に可能であるという認識論に立ち、人間の歴史的・能力的な制約を認めつつ、その不断の努力が有効であり、また重要であることを教育理念として掲げ続けた。五井蘭州、中井竹山・履軒、山片蟠桃、懐徳堂から追放された富永仲基など、個性的な学者たちの著者の記述は熱っぽく何とも暖かい。2015/06/04
ねこみ
0
おもしろかったーーー!2022/04/01