出版社内容情報
社会秩序の要として今日も機能し続ける天皇制.明治維新をはさむ約一世紀の間に,天皇制をめぐる観念の大部分は作り出された.その生成と展開の過程を思想史の手法で分析し,天皇制の本質を解明する渾身の書下し.
内容説明
社会秩序の要として今日も機能し続ける天皇制。この天皇制をめぐるイメージの大部分は、近代国家の形成期である明治維新をはさむ約100年間に作り出された。その生成と展開の過程を、思想史の手法によって、具体的な史料に即して分析。近年の研究を体系的に総合して書き下ろされた本書は、近代天皇制の本質を鮮やかに解明する。
目次
第1章 課題と方法
第2章 近世社会と朝廷・天皇
第3章 民俗と秩序との対抗
第4章 危機意識の構造
第5章 政治カリスマとしての天皇
第6章 権威と文明のシンボル
第7章 近代天皇像への対抗
第8章 近代天皇制の受容基盤
第9章 コメントと展望
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
2
現代につながる天皇制は近代の時点で作り出されたという「断絶説」に則り、幕末期に奔出した様々な社会思想の中で新たな天皇像が形成されていくプロセスを活写する大作。不安な世相の中で天皇制と競合し、あるいは取り込まれていった様々な異端邪説とのせめぎ合いが興味深い。あらゆる思想や運動を取り込んでしまう天皇制の懐の深さは、実は中身の無さに由来しているのかもしれず、維新の時点で明治天皇が自らの政治的意思を持たない少年であったという事実は、この意味で意外に大きな影響を持ったのかもしれない。2021/12/21
katashin86
1
天照以来の聖性・祭政一致という神権的・伝統的権威という根拠づけと、文明開化の先頭たる超越的・啓蒙的権威としての位置づけ。仕掛けたのは明治政府であっても、乗っかったのは社会の側なのだろう。 「現代天皇制は、選別=差別によって秩序を確保しつづけようとする社会の側が求めたもの」2015/02/10
竹の花
0
メモ.2007年の岩波現代文庫版には新稿「天皇制とジェンダー・バイアス」が追加されているとのこと2021/05/25