出版社内容情報
古来日本人は「死」をどのように受け止めてきたか.死をめぐる儀礼,とくに大嘗祭の構造の歴史的分析を通して,日本人の「死の観念」の特色を浮彫りにし,天皇の死をめぐってオリジナルな比較宗教学的考察を試みる.
内容説明
本書は日本人における遺骨崇拝の源流をさぐり、その歴史的展開の相を追跡。さらに死と葬送の儀礼、とくに天皇の死をめぐる儀礼の構造を分析し、日本人のなかの、「死の観念」の特色を浮び上らせる。この作業を通して,著者は天皇の「生理的な死」と「社会的な死」の差に着目するとともに、「王権」と「王位継承」についての比較宗教学的考察を展開する。天皇論、大嘗祭論に新しい視点から一石を投じる注目作。
目次
1 死と民俗―遺骨崇拝の源流
2 神話に現われた世界像
3 大嘗祭と王位継承
4 浄穢の中の王権
5 二つの肉体―チベットにおける王位継承と転生思想
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Takayuki Oohashi
20
上橋菜穂子の「精霊の守り人」を読んだ時、物語の舞台、新ヨゴ皇国の皇位継承の設定が非常に東アジア的で、凝っていたことを思い出します。帝と皇太子チャグムの関係が、この本に書いているように、「天皇霊」を引き継ぐように感じたのです。そういう意味では、物語の創作には非常に示唆してくれる本だと思いました。現代人が忘れてしまった古代の人々の霊と肉の関係や、死の穢れの領域など、感覚的にしか分からない話が丹念に説明されていました。ただ、僕は島薗進の「国家神道と日本人」のような現代の批判にもつながる、生臭い本の方が好きです。2016/09/10
ノンタス
0
日本人の死生観を調べた本。 冒頭を読んだときはトンデモ本だと思ったがそうでもなかった。 天皇制とダライ・ラマ制を比較したり、西洋の王権空位のしのぎ方だとか、転生の概念等、合理的な説明を試みている。 日本人の考え方が特異な部分もあるのだなと感じるような一冊だった。2017/08/30